「現金大国ニッポン」の根強さを示す決定的証拠 キャッシュレス推進派に不都合な真実

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現金が落ちた分、増えたのが、電子マネーとコード決済だ。それでも電子マネーは10%が増税後に16~17%になっただけで、その後は横ばい。コード決済も3%未満だったものが、増税後に5%を超え、2月以降は7%を超えるようになったが、その後は横ばい、もしくは若干低下ぎみだ。

電子マネーやコード決済は利用率こそ増税後に大きく伸びたが、「もっぱら小額決済にしか使われておらず、高額の決済は相変わらず現金とクレジットカード」(インテージの駒崎幹拓・市場調査アナリスト)というわけだ。

クレカは高額支払いに利用

「回数シェア」は、調査期間中のレシート枚数を集計したもので、各決済手段の合計レシート枚数を、調査期間中に買い物をしたモニターのレシート総数で割って算出している。レシート枚数による集計なので、1回に買った金額の多寡は反映されない。

この指標では、現金の比率が4割台に乗る一方、クレジットカード・デビットカードは2割台。金額シェアでは拮抗しているのに、レシート枚数で差が出てしまう状況からは、1回当たりの買い物金額が高額の場合はクレジットカードで支払うが、そうでなければ現金払いを選んでいる消費者の姿が浮かび上がる。

電子マネーやコード決済の利用率は伸びたとはいえ、派手な宣伝やキャンペーンから受ける印象とは異なり、現金やクレジットカードに比べて、利用している人数も、利用金額も、利用頻度もまだまだ少ない。

新型コロナ禍が「現金は誰がさわったかわからないもの」であることを知らしめたはずだが、それでも日本人の現金志向は揺るがなかったということだろう。「現金大国ニッポン」は健在だ。

伊藤 歩 金融ジャーナリスト

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いとう・あゆみ / Ayumi Ito

1962年神奈川県生まれ。ノンバンク、外資系銀行、信用調査機関を経て独立。主要執筆分野は法律と会計だが、球団経営、興行の視点からプロ野球の記事も執筆。著書は『ドケチな広島、クレバーな日ハム、どこまでも特殊な巨人 球団経営がわかればプロ野球がわかる』(星海社新書)、『TOB阻止完全対策マニュアル』(ZAITEN Books)、『優良中古マンション 不都合な真実』(東洋経済新報社)『最新 弁護士業界大研究』(産学社)など。

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