左派復活のためには新しい思想が必要だ--イアン・ブルマ 米バード大学教授/ジャーナリスト

左派復活のためには新しい思想が必要だ--イアン・ブルマ 米バード大学教授/ジャーナリスト

20年前、ベルリンの壁が破壊されソビエト帝国が崩壊したとき、共産主義のユートピアをかたくなに信じていた人々は惨めな思いを味わった。

しかしながら、1989年は活気に満ちたときであった。人々は、自由と正義が燎原の火のように拡大する新しいリベラルの時代の到来を夢見た。だが、20年経った今、それが間違いであったことが明らかになった。

欧州の国々では、排外主義的な大衆迎合主義が忍び寄っている。社民党は勢力を失い、右派の扇動主義者がイスラム主義者から“西欧の価値”を守ると声高に叫んでいる。

最近、ソビエトの最後の大統領だったゴルバチョフ氏が「西欧資本主義は古い敵を倒し、自らを世界の進歩を具現化する存在であると思っていた。だが、実際には世界を歴史的な袋小路に追い込んでいる」と警告を発したが、ここ数年の経済的破綻はその警告を裏付けているように思える。

アメリカのリベラル派は、89年の敗者に名を連ねている。社民主義者は共産主義者に軽蔑され、また彼らも共産主義者を軽蔑してきた。しかし、マルクス主義の社会正義と平等の思想に根差していた社民主義の理想は、共産主義という浴槽の水が捨てられたとき、浴槽の中にいた赤子のように一緒に流されてしまった。

社民主義崩壊の過程は、ベルリンの壁の崩壊以前に過激な自由市場思想を主張したサッチャー・レーガン時代にすでに始まっていた。多くの人にとって、自由市場主義は過剰に規制された市場や尊大な労働組合からの解放を意味した。それが“ネオリベラリズム”と呼ばれるゆえんであった。

しかし、自由市場主義は正義に満ち、平等な社会を建設する国家の役割を損なってしまった。ネオリベラル派は、経済の効率性や生産性の向上には関心を抱いていたが、正義にはそれほど関心を示さない。

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