ルルレモン、「商品を売らない」異色の成長戦略 カナダ発「衣料品ブランド」が六本木に旗艦店

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日本でも再上陸した直後は小規模なショールームを設けて顧客の反応を探る日々だった。「正直、最初は少し苦労した」とリー氏は打ち明ける。

イベント開催を呼びかけても、「入りづらさ」から初回は1人での参加を躊躇する傾向が海外の顧客より強かった。そのため「友人と2人で参加してください」「お子さんを連れてきてください」などとアプローチを工夫して、複数人での参加を促すヨガレッスンも開催。大々的な広告は行わず、イベント参加者からの口コミで顧客層を広げていった。

日本は海外戦略の中心市場の1つ

品ぞろえの面ではスポーツ専用商品よりも、軽い運動や通勤など多用途で利用できる商品を中心に構成したという。

ルルレモンは中国や韓国、シンガポールにも店舗を展開するが、アジア最大の旗艦店を六本木に開業したのは、日本市場をとりわけ重視していることの表れでもある。日本ではユニクロを筆頭に、高機能をウリとする衣料品の市場は競争が激しい。

だが、ルルレモン・アスレティカの創業者は常々日本の接客サービスや商品の品質の高さを引き合いに出し、「日本で売れないなら世界に通用しない」と社内で語っていたという。リー氏は「2019年に海外部門のビジネスを4倍に拡大する目標を出したが、日本は(海外強化の)中心となる市場の1つ」と力を込める。

大型路面店となるルルレモンの六本木ヒルズ店(記者撮影)

とはいえ、世界でも日本でも具体的な店舗数の目標はないようだ。出店地域はやみくもに拡大せず、特に今後は実店舗とデジタルの垣根を越えて活動できるコミュニティの構築に注力する方針だ。当面は新型コロナの影響で実店舗への来店が減っても、オンラインレッスンなどデジタルも駆使しながら顧客とのつながりを深めていく。

「極端に言えば、ある地域では3店舗しかなくても多くの顧客とつながるだけつながれば(事業として成り立つ)、という側面はある。拡大戦略よりも集中戦略で、ブランドをしっかり、ゆっくりと理解していただきながら長く顧客とお付き合いしていきたい」(リー氏)。

大量出店や売り上げ重視の販売といった従来の小売り企業の正攻法とは真逆を貫くのがルルレモンの戦略だ。アフターコロナの日本でも受け入れられるか、その挑戦の行方に大きな注目が集まっている。

真城 愛弓 東洋経済 記者

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まき あゆみ / Ayumi Maki

東京都出身。通信社を経て2016年東洋経済新報社入社。建設、不動産、アパレル・専門店などの業界取材を経験。2021年4月よりニュース記事などの編集を担当。

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