中学受験は父の「経済力」と母の「狂気」が全てだ 漫画「二月の勝者」が描く受験の現実(前編)

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しかし佐倉は気づく。匠が鉄道オタクであることに。そこで黒木は鉄道研究部がある男子校のパンフレットを集め、加藤親子に見せる。匠の目が輝きを取り戻す。そのうえで黒木は匠の母親に「匠くんは受験に向いていないとは思いません」「お母様こそお疲れなのではないのかなと思いました」「諦めるなんてもったいない……匠くんに目標ができたならなおさら。われわれと一緒に支えていきましょう」と話し、退塾を阻止した。

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黒木はしっかり、親のつらさも受け止める。

黒木の二面性に戸惑いつつも、佐倉は、桜花ゼミナールに通う生徒の家庭で次々生じるドラマにいよいよ巻き込まれていく。

<第2集>コミック帯文言「受験は課金ゲームです。」

髪をしっかりセットして、カッチリとスーツを着込んで塾の教壇に立つ黒木と、ボサボサの髪のままパーカー姿で夜の街をふらつく黒木。第2集の中盤には、黒木にどうやら2つの顔があることがわかってくる。

第2集の注目生徒「前田花恋」

新小6の3月は転塾が増える時期だと黒木は言う。案の定、桜花ゼミナールでトップクラスの成績を収め、上昇志向の強い前田花恋は、黒木の古巣フェニックスへの転塾を検討していた。

勉強ができる特技はなぜ褒めてもらえないのか

黒木は花恋のいら立ちも見通していた。「なんで『勉強ができる』って特技は、『リレー選手になれた』とか『合唱コンクールでピアノ弾いた』とかと同じ感じで褒めてもらえないんだろうね?」「花恋はトップが似合ってる。『その他大勢』になんてなってほしくない」「花恋は女王になれるところでしか輝けない」と語りかけ、花恋を引きとめる。

うっかり夜の街に迷い込んでしまった花恋を救う黒木

パーカー姿で公園にたたずむ黒木の前に、古巣フェニックスの同僚・灰谷純が現れる。「してやられちゃいました。まんまと生徒(花恋のこと)を取り返されちゃって」と黒木に話しかける。灰谷との会話の中で、2人の中学受験観の違いが明らかになっていく。

「フェニックスは、あいかわらず上位校にのみこだわった指導をしてるようだけど、それって12歳のその先の人生のことまで考えているのかな」と黒木。

「愚問ですよ」と灰谷。「小学生がその6年間のうちの半分、3年間も費やして勉強に励む。その大きな『無理』に見合った結果を出すのが僕たちの使命です」と灰谷は言い切る。

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