「日本へのメッセージ--グーグル、若者、メディア、ベンチャー精神について」梅田望夫(後編)

「日本へのメッセージ--グーグル、若者、メディア、ベンチャー精神について」梅田望夫(後編)

グーグル、Web2.0、オープンソースなど、ウェブ世界に起きている新たな潮流を描き、ベストセラーとなった『ウェブ進化論』(ちくま新書)。その著者である梅田望夫氏に話しを聞くため、氏がコンサルティング会社を構えるシリコンバレーのオフィスを訪ねた。(6月19日発売号の『週刊東洋経済』:「Web2.0」特集の特別版) (前編はこちら)

ベンチャーの”制度”は十分に整った

--日本のベンチャー企業に関する法整備の状況についてはどう思われますか?

制度はもう遅れていない。十分ある。今はアメリカよりも早く株式公開できるしね。もうこの5年ぐらいで、いきすぎるぐらい制度は準備されましたね。ブロードバンドも整備された。だから、ネットの世界限定で言えば、ものすごくちゃんと整備された。だって、ドリコムとか、アメリカで公開できないような、売り上げも数億円しかない会社が公開しているわけだから。しかも、700億円とか800億円とか時価総額がついているわけでしょ(上場後、一時、時価総額は1000億円を越えたが、6月20日時点で、423億円にまで減少)。アメリカでは想像もつかないくらい簡単に起業もできるし、彼らにお金を出してくれるエンジェルもいれば、それで公開もさせてくれると。

だけど、一番問題なのは、もっとメンタルな部分でしょ。(ベンチャーで成功しても)誰も褒めてくれないってことだね。誰も本当にいいことをしたって言ってくれないというところがあるんじゃないかな。

制度については、シリコンバレーに12年いるんですけど、10年前って、ベンチャーキャピタルがあって、ナスダックがあって、ベンチャーが次々生まれてくるというインフラはここにしかなかったんですよ。だけど、インターネットのブームとともに、ここの制度というのを、日本を含めて全世界が真似たよね。中国にもそういうベンチャーがどんどん出てきているし、ヨーロッパにも少しはできている。そういう意味で、みんなここを学びつくしましたよ。投資組合の制度だってできたし、ベンチャーキャピタルも随分できて、マーケットもできたでしょ。いきすぎたくらい簡単に上場できるようになっちゃった。

なぜ新興市場が必要なのか

大事なのは「なぜ未公開、新興市場というのが、社会にとって意味があるのか」というところ。今は「新興市場というのがアメリカにもあるらしい、それを孫さんが引っ張ってきましたね」くらいの認識。孫さんだっていまだに誰からも褒められない、みたいなね。そういう感じじゃない。もちろんわかっている人はわかっているかもしれないけど、相変わらず「何をやってるかよくわからない」とほとんどの人は思っていて。それは孫さんに限らず、楽天の三木谷さんにしたって、(GMOインターネットの)熊谷さんでも誰に対してもそう。新興市場というものを、うさん臭いものだとほとんどの人が思っている。

ところがね、シリコンバレーでは、新興市場のちゃんとした意味というか役割が理解されているわけですよ。つまり、「みながトライして、失敗したり成功したりということがカジュアルにたくさん行われないと、無から有を生み出すイノベーションというのは一つも出ない」という認識がある。これを制度的にどうすればいいんだということですよね。多産多死のメカニズムを社会でどうやってつくるんだという認識があるよね。

多くの人の、企業家主導型経済に対する不信感の源泉というのは、たいしたことない時点で成功を確定するからなんですよ。つまり、上場ということですよね。新興市場というのは、これからどうなるかわからないものを上場させて、一応上場したら成功というレッテルを貼るというメカニズムをもっているわけですよ。このメカニズム自体の価値を理解しているか、していないかという問題が最後にある。

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