邦銀を取り巻く事業環境は引き続きネガティブ《ムーディーズの業界分析》

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低収益性の継続を前提としたとき、邦銀には、いくつもの克服すべき課題があるとムーディーズは認識している。各行に共通する主要な課題としては、特に国内において今後の収益機会が見当たらない点、依然として上昇懸念のある与信費用、そして特にメガ銀行グループについては、その事業モデルに比して現行資本水準が必ずしも十分でないことが挙げられる。

このような事業環境下では、与信費用の急増や株式市場の急落に表象されるような、事業環境の急速な悪化が再度生じた場合、最近行われている自己資本増強にもかかわらず、メガ銀行を中心に各行の財務ファンダメンタルズは再び大きな影響を受けることが想定される。

メガ銀行は、このような収益体質、国際的な自己資本比率の議論の動向も踏まえて、昨年以降、損失吸収バッファとしての資本の質・量の強化のため、巨額の普通株増資を行っている。ただ、巨額の普通株増資それ自体は、個別行の銀行財務格付け上はプラスに考慮されうるが、それだけが現行の財務格付けを支え、またそれらの格上げを促すものではない。他方、格付け対象地方銀行は、優先出資証券、優先株式の発行状況が限定的であるため、その資本の質は高く、またTier1 比率もおしなべて大手行よりは高くなっている。

なお、邦銀の流動性は一般的には潤沢であると、ムーディーズは理解している。これは、抑制された預貸率と、市場調達への依存度が低い点、そして、余剰資金を用いて多額の日本国債を保有していることによるものである。

昨秋以降、金融危機に対応すべく、政府等により、種々の施策がとられているが、これは当局による銀行セクターへの強い支援姿勢を示すものとムーディーズはとらえている。また、各行の預金格付けを決定する際に、従来から高いレベルで織り込んでいる政府サポートが具体化したものと解釈している。

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