「一蘭」スタイルを他のラーメン店も真似る訳 コロナ対策に苦闘する飲食店が打ち出す工夫

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一方で、人出が戻らない繁華街からは悲観的な声が聞こえてきます。新橋で立ち飲み居酒屋を営む小松さん(仮名)は、「『ステップ3』になっても客は来ない。テレワークでオフィス街に来る人も少ないし、飲み会を禁止している会社もあるし」と、沈痛な表情を浮かべます。

確かにJR新橋駅の周辺では、依然として空席の目立つ居酒屋が目立ちます。店員が大声でお客さんを呼び込む声が響くなか、行き交う人々の多くは足早に駅に向かっていました。

外出の自粛がやっと緩和されたことだし、外食したい、飲みにも行きたい。だけど感染拡大前のように街に繰り出してもいいものか――。悩ましさを感じる人は少なくありません。

「ゴハンに誘われたけど、なんとなく怖くて……」。日比谷のオフィスに勤務する長岡さん(仮名)は、まだ外食する気になれないと話してくれました。「久しぶりに出社して、仲のいい同僚の顔を見たら、そりゃ一杯行きたくなりますけどね。でも誘っちゃっていいものか……」と、テレワーク明けの田原さん(仮名)は周囲への忖度を口にしていました。

「店も営業再開し始めたし、なじみの店には顔を出したい。東京アラートも解除された。でも全開でアクセル踏んでいいのか。なんか気持ちのどこかでは、まだブレーキ踏んでますよね」。こう続けた田原さんの言葉は、まさに現状の日本国民の気持ちを代弁しています。

メニュー表を廃止、自分のスマホで注文

政府が公表した「新しい生活様式」では、食事について「対面ではなく横並びで座る」「大皿は避けて、料理は個々に」「おしゃべりは控えめに」などと記載されています。外食するには、利用する側の努力や配慮と同時に、飲食店サイドの「感染防止への対応策」が求められています。

「従業員のマスク着用」や「アルコール消毒液の設置」などの対策は、すでに多くの飲食店が実施していますが、なかには利用客に安心してもらうために、独特の工夫を施している店もあります。

東京駅近辺の八重洲にある居酒屋では、常時ドアを開放し換気しつつ、入店時には「検温」、除菌ペーパーでスマートフォンを消毒するなど、かなり細かな感染防止体制をしいています。しかも、こうした対策をきちんと実践するために、専任の「消毒担当スタッフ」を店頭に配置するといった徹底ぶり。

また日本橋にあるイタリアンレストランでは、不特定多数の人が触れるメニュー表を廃止しました。各テーブルにQRコードを設置し、お客さんが自分のスマートフォンで読み取り注文するシステムに変更し、衛生面に配慮しているのです。冒頭で紹介した「ラーメン二郎」の仕切り板もそうですが、少しでも安心して来店できる環境は、お店の業績を左右する極めて重要なファクターといえます。

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