日本人の労働生産性が上がらない決定的な要因 テレワークが進展しない訳を探ると見えてきた

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OECDは、労働生産性のデータを公表しています。

それによると、日本の労働生産性(就業者1人当たりのGDP)は、危機的とも言える水準です。

2018年において、日本はアメリカの58.5%でしかなく、韓国以外に、トルコやスロベニアにも抜かれています。

世界でトップのアイルランドに比べると、わずか4割でしかありません。

まさに「惨憺(さんたん)たる状況」としか言いようがない状態です。

労働生産性の低さは、日本でテレワークが進展しないことと密接にかかわっているのではないでしょうか?(図表3)

テレワークを導入しないから、労働生産性が低い?

「テレワークの最新動向と総務省の政策展開」は、テレワークを導入していない企業の労働生産性=(営業利益+人件費+減価償却費)÷従業者数は、599万円であり、テレワークを導入している企業の労働生産性957万円の1.6分の1でしかないことを指摘しています。

もちろん、上述のことから因果関係を導き出すことはできません。つまり、「テレワークを導入していないから生産性が低い」のか、「生産性が低いからテレワークを導入できないのか」、どちらであるのかを判定することはできません。

おそらく、共通の原因が両者を決めているのでしょう。つまり、仕事の進め方に問題があるために生産性が低く、また、テレワークも導入できないのでしょう。

そして、仕事の進め方が適切な企業は、生産性が高く、また、テレワークも導入できるのでしょう。

では、上で述べた「仕事の進め方」とは、具体的には何でしょうか?

次の2つを指摘することができます。

1つは、勤務の評価が成果主義になっているかどうかです。日本企業では、多くの場合に、そうではなく、勤務時間よって評価をするのが一般的です。

このような組織では、オフィスに「いる」ことが最重要だということになります。「在宅勤務では、従業員が管理者の目に届かないところにいるため、勤務の管理が難しい。だから、在宅勤務を認めない」ということになるのです。

これは、前記「テレワークの最新動向と総務省の政策展開」でも、「業務の進行が難しい」、「社内のコミュニケーションに支障がある」、「社員の評価が難しい」という回答として現れています。

次ページ紙とハンコから脱却できない日本の組織
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