消えゆく都心の練習場

キャスター/小倉智昭

 ゴルフ練習場がどんどんなくなる。かつては東京都心の便利な場所にあったのだが、採算が合わないためか、あるいは資産売却のためか。高いネットがいつの間にか消え、跡地にはマンションやビルが建っている。100ヤード程の距離しかない小さな鳥かごのような練習場だったのに、立派なマンションが2棟もできて驚かされる。狭く感じていたのはどうやら錯覚だったようだ。

東京ドームは広さを表す基準になっている。東京ドームの何個分と言われれば、おおよその見当がつく。確かに、初めてドームのスタンドから球場を見たとき、その大きさに息をのんだものだ。しかし、両翼は100メートル以下である。小笠原や阿部がスタンドまで運ぶホームランは、ゴルファーにとって、ピッチングか9番アイアンの距離だ。いかにゴルフが場所をとるスポーツであるか理解するのは簡単だろう。

ロングホール、500ヤード先にピンフラッグが見える。クラブを持たず、ボールを打っていなければ、歩くのはおっくうだ。
 「次のホール後に売店があります」。そう言われて、疲労感から解放されるのは私だけであるまい。まだ900ヤードも残っているのにだ。日常生活なら、空車のタクシーを拾っているかもしれない。ゲームに熱中すると人間は変われるものである。

それにしても、冷静に考えるとゴルファーの能力はかなり高いと思う。グリーンに切られているカップの直径は、一升ビンの底より若干大きいくらいだ。そんな小さな穴に、手を直接使わず、クラブだけで4回や5回で入れてしまう。200ヤード先の穴に1回で放り込んだり、500ヤードを2回でというケースだってある。
 ゴルフを始めた頃、500ヤードを実感するために、手だけを使ってゴルフをやったことがある。野球のボールと違い、ゴルフボールは投げても飛ばない。パターも使わず、手で転がすと、これまたかなり難しい。ロングのスコアは20だったと記憶している。「手の5番」といったギャグは昔から存在するが、クラブより手のほうが思った場所に飛ばないし、転がらないものだ。
 以来、ゴルフに対する考え方が楽になった。かなり困難なゲームを、体の動きをクラブに伝えるだけでやるスポーツ。甘く見ると痛い目に遭う。だが自分の手だけで狙うよりも、道具に頼ったほうがうまくいく。ならば、なるべく正確な運動をするように心掛け、あとはクラブとボールに仕事させよう。日頃、同じことの繰り返しが大嫌いな私が、飽きもしないで練習するようになったのは、そんな発想の転換があったからだ。46歳から始めたゴルフの割には頑張ったと思っている。

新宿、芝公園、有明と、職場の近くに練習場があった頃は、1時間の余裕があれば飛んで行ったものだ。往復1時間もかかるようでは足も遠のく。誰か、練習場造ってよ。

キャスター/小倉智昭(おぐら・ともあき)
1947年秋田県生まれ。東京12チャンネル(現テレビ東京)アナウンサー出身。76年フリーに。現在は『とくダネ!』(フジテレビ系)や『嵐の宿題くん』(NTV系)、『小倉智昭のラジオサーキット』(ニッポン放送)の司会を務めるなど、幅広く活躍中。
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