バラ積み船市況は底入れか 4万ドルへ急騰後、1万ドル割れ。この後は?

拡大
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「短期的には新造船などの供給要因よりも、荷動きの変動の要因が大きい」と商船三井の田中利明・鉄鋼原料船部長は指摘する。鉄鉱石の最大輸入国である中国では、月によって輸入量が半減することもある。「年間ではこれだけ増えると読めても、数週間単位で巨大なボリュームが増減すれば、市況を動かす」(同)。

季節要因もある。鉄鉱石を産出する豪州やブラジルは南半球にあり、12~4月ごろが雨季。雨が降ると採掘現場はぬかるみ、ダンプカーも動けない。一方、買い手の中国は2月前後が旧正月で、やはり生産活動が止まる。「雨季の影響と旧正月が重なると、市況下落も大きくなる」(同)。

フリー船は漸増の公算

中長期的な市況はどうなるのか。日本郵船によると、ケープサイズの新造船は2010~2012年に全世界で毎年200隻を超えていた。が、2013年は160隻、2014年72隻、2015年54隻と供給圧力は急減する見通しだ。日本郵船・製鉄原料グループ統轄チーム長の江原出氏は「2016年は再びケープサイズの新造船竣工が増えるが、2014~2015年の市況は基本的に強い」と話す。

もっとも、安定収益源の長期契約がケープサイズ全体の8~9割を占める現状が、今後も維持できるかは微妙だ。「中国で中小鉄鋼メーカーが台頭し、資源メジャーが船を手当てする例が増えた。彼らはほとんど長期契約でなく、マーケット価格で用船している」(商船三井の田中氏)。

フリー船漸増に備え、海運各社はどう動くのか。

商船三井は2013年3月期、ケープサイズを含むフリー船130隻をシンガポール子会社に移管。譲渡損失1000億円を計上し、将来の市況変動リスクを回避した。フリー船の活用で、中国やインドなど成長市場を取り込むことを目指す。

日本郵船も今年3月の中期経営計画説明会で、対策を明らかにした。

工藤泰三社長は、「短期契約の荷物には、短期用船の船で対応する」と説明。自社保有船舶という資産(アセット)を極力軽くするライトアセット戦略を、バラ積み船でも進めていく構えだ。

週刊東洋経済2014年4月19日号〈14日発売〉「価格を読む」に一部加筆)

大滝 俊一 東洋経済 記者

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おおたき しゅんいち / Shunichi Otaki

ここ数年はレジャー、スポーツ、紙パルプ、食品、新興市場銘柄などを担当。長野県長野高校、慶応大学法学部卒業。1987年東洋経済新報社入社。リーマンショック時に『株価四季報』編集長、東日本大震災時に『週刊東洋経済』編集長を務め、新「東洋経済オンライン」発足時は企業記事の編集・配信に従事。2017年4月に総務局へ異動し、四半世紀ぶりに記者・編集者としての仕事から解放された

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