欧州駐在とリストラから学んだ、経営の要諦 ダイキン工業 執行役員 空調営業本部長 坪内俊貴(下)

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 日本に今ほど、新しい事業や商品が求められている時代はない。ただし、多くの日本の企業は、縦割り構造が強く、異分子が混ざり合うチャンスが少ないのが現状だ。そんな状況にもめげす、大企業の中でイノベーションを起こしてきた“プロデューサー”たちにインタビューし、その思考法や生き方などを学ぶ。

 ダイキン工業の欧州駐在員を経て空調営業本部長に就任した坪内俊貴執行役員。欧州でのマネジメント経験を踏まえて、試行錯誤の末にたどり着いたマネジメント、リーダー像とは?

※ 前編:「ダイキンの”欧州躍進”のタネを蒔いた男」はこちら

半年かけて人事評価する

三宅:坪内さんの様子を見ていると、周りの人をやる気にさせて、その人の能力を120~130%くらい発揮させるのが上手なのだろうなと感じます。日本人よりもさらに貪欲なヨーロッパの人たちから、どうやって能力を引き出していったのですか。

坪内:やっぱり、日本もヨーロッパも同じだと思いますよ。みんな、一生懸命働いている人の背中を見ていますね。それから、責任を取ってくれる人の背中を見ています。自分を評価し、引き立ててくれる人の言うことをいちばんよく聞くのです。

ヨーロッパでは人事評価にすごく時間をかけていて、たしか10月か11月ぐらいから個人面談を始め、一人ひとりと、「今年、自分は何をしてきた」「どういう成果があった」「来年はどうするか」を話し合います。これが2月、3月まで延々と続きます。

三宅:そんなに長いのですか。

坪内:本当に半年間ぐらいは、評価に時間を割きますからね。しかしそれが大事なのです。ここで評価を間違えると、結局、その人のモチベーションをなくしたり、間違った目標を与えたりしてしまいます。

三宅:ひとりにつき何回くらい面談するのですか。

坪内:私の場合、だいたい2回から3回ですね。非常に時間がかかります。だから前回も述べたように、評価権を持っている上司が非常に力を持つのです。ただ尊敬されるかどうかは、また別です。尊敬されるのは、やっぱり人よりも多く働く人です。

三宅:そこは日本もヨーロッパも同じですね。

坪内:それから責任をきちんと取る人。そして甘さを見せない人。要するに、間違っているときはきちんとしかるということです。しかり方も他人の面前でしかる場合もあれば、自分の部屋に呼んで1対1で話す場合もあります。よく「ほかの人の前でしかるとプライドが傷つくからよくない」なんて言うでしょう。

三宅:はい、言いますね。

坪内:でも、そうではないのですよ。やっぱり適切なジョークというか、エスプリというか、ユーモアを利かせながら間違いを指摘する。人前で相手の自尊心をくすぐりながら、なおかつしかる、これが効果があるのです。そこまでうまくできないとしても、せめて別室で厳しい指摘をする必要があります。そうでないと、悪い言葉で言うとなめられるというか、言うことを聞かなくなります。それは畏敬されていないということですね。

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