日本企業は業績最悪期を脱し格付け安定化は進むが、力強い回復には遠い《スタンダード&プアーズの業界展望》

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加速する構造変化への対応力がカギ

国内市場をはじめ成熟化する先進国市場と成長を続ける新興国市場の対比は、ここ数年、世界的に事業を展開する企業にとって一層重要な経営課題として認識されてきた。しかし、08年秋以降の世界的な景気悪化局面とその後の回復過程では、市場の大きな先進国において需要の戻りが遅く、結果的に新興国市場への需要シフトが加速している。

また、原油価格の変動等を背景に、ここ数年、世界的に小型で燃費の良い車への需要のシフトが進んできた自動車業界でも「エコカー減税」や「スクラップ・インセンティブ」といった各国政府による景気刺激策が、小型低燃費車への需要シフトを大きく後押しすると同時に、ハイブリッド車(HV)の需要や電気自動車(EV)への関心を一気に高めることになった。

この1年余りの間に、このような構造的な変化が一段と加速されてきたことは、成長が期待される新興国市場でビジネスを拡大できる基盤を持つ企業や、環境対応製品で事業機会をつかめる企業が優位に立てる可能性が一段と高まったことを示唆している。

多くの業種が構造的にも大きな変革期を迎えており、需要の先行きに不透明感が残る中で、商品やサービスの競争力や財務力の差とともに、変化に適応する力の差が個別企業の信用力の格差拡大にもつながっていく、とスタンダード&プアーズはみている。

構造転換への対応を資金面も含め、すべてを自社の経営資源で賄える企業ばかりとは限らない。他社との連携が必要となるケースは今後増えていくとみられ、2010年はM&A(企業の買収・合併)や大型提携といった企業間の連携が一段と活発になる可能性が高いだろう。

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