財源は見つかるか?法人減税の議論が本格化 租税特別措置はゼロベースで見直し

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「増えた(法人税の)税収を補正予算に使うのでなく、財政健全化と景気対策、法人税減税の『三方一両損』に資するべき」

「法人税率を下げたら、本当に経済成長に結びつくのか。法人税率下げることが規制緩和でなく、どれくらい経済成長に結びつくか、非常にコントロバーシャルな(論争的な)部分がある」

法人課税ディスカッショングループの座長を務める大田弘子政策研究大学教授

政府が6月にとりまとめる成長戦略への盛り込みを目指し、法人減税をめぐる議論が本格化している。4月14日、政府税制調査会の法人課税ディスカッショングループ(DG)が開かれ、出席した経済界出身の委員と財務省との間でこんなやり取りがかわされた。

冒頭の発言の主は、前者が経済財政諮問会議の議員でもある東芝の佐々木則夫副会長、後者は財務省の田中一穂主税局長だった。

10%引き下げで約5兆円の減収

経済界は現在、約35%の法人税率をアジア諸国並みの25%へ引き下げることを求めている。しかし、この日の議論で改めて鮮明になったのは、法人減税に踏み切るには減税分の財源をいかに確保するかという難題だ。

法人税率を10%ポイント引き下げると、5兆円近い税収が失われるとみられている。同日のDGで議論されたのは、租税特別措置(租特)と減価償却制度の見直しだった。この日提出された財務省と総務省の資料では、租特によって国税で約1兆円、地方税で約2500億円の減税になっていることが示された。

国税の租特のうち規模が最も大きいのは研究開発税制の3954億円。次いで中小企業の法人税率の特例(法人税率を19%から15%に軽減する分)で961億円だった(いずれも2012年度)。

会議の中では、委員の間から「租特のゼロベースでの見直しが必要、というのはきわめて妥当だ」「研究開発税制が誰に、どのくらい効果あるのか。政策評価の視点が必要だ」などという意見が相次いだ。仮に国税の租特を全廃しても、増収分は1兆円。制度見直しで捻出できる財源には限界もある。そのため、法人減税の額は代替財源の規模次第ということになりそうだ。

会議終了後、記者会見したDG座長の大田弘子・政策大学院大学教授は、「おおむね論点に賛同が得られた。租特はゼロベースで見直し、特定企業に利用に偏りあるものはイコールフッティングの観点から見直す必要がある」と述べた。

また、大田座長は、「次回は地方法人課税、次々回は(個人事業者が事業を法人に変更する)『法人成り』を含めた中小企業課税の議論をし、その後、これまでの議論を一挙に束ねて法人税改革のメニューをつくっていく」と、今後の議題についても言及。法人税の在り方が議論される次回会合は4月24日に予定されている。

山田 徹也 東洋経済 記者

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やまだ てつや / Tetsuya Yamada

島根県出身。毎日新聞社長野支局を経て、東洋経済新報社入社。『金融ビジネス』『週刊東洋経済』各編集部などを経て、2019年1月から東洋経済オンライン編集部に所属。趣味はテニスとスキー、ミステリー、韓国映画、将棋。

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