多忙な業務に追われる弁護士に「残業代は出る?」
──では最初に、おふたりが体験した職場の勤務環境を教えてください。
宇都宮:弁護士の場合、独立できるまでは誰かの法律事務所に雇われますね。事務所のオーナー弁護士は「ボス弁」、雇われ弁護士は居候を意味する「イソ弁」などと呼ばれます。私は独立できるまでに13年ほどかかりましたので、「イソ弁時代が長いね」とよく弁護士仲間たちから言われていました(笑)。
労働環境としては、弁護士の場合は、携わる案件によりフレックスな働き方をするというパターンもあれば、定時出勤などのパターンもあり、事務所もしくはボス弁との契約の仕方によってさまざまです。私が最初に勤めた事務所は、時間的な拘束は緩く、その代わり「ちゃんと仕事してね」という感じでしたね。
日野:「ちゃんと仕事をする代わりに時間的な拘束は緩い」というのはフェアだと思いますね。
宇都宮:ただ、弁護士の場合、依頼主をはじめとする訴訟関係者との面談や、書類作成、弁護対策を練る時間など、夕方定時で業務が終わらないことはざらですね。そして残業代が出ないこともざらですよ(笑)。
日野:うーん(笑)。
宇都宮:それでも勤務時間・労働体系をめぐって、雇用者と訴訟トラブルになる、ということは、まあ聞いたことはないですね。まあ、弁護士の場合は、イソ弁であっても事務所の仕事とは別に自分個人の依頼主を抱えるというケースがあり、そうしたオプション収入も見込めるので不満は出ないのかもしれません。
日野:そうですね、独立がほぼ定石の弁護士さんの場合、一般のサラリーマンとはちょっと世界が違うのかもしれません。たとえばサラリーマンでも、外資系コンサル企業に3年勤めて、独立して起業する人なんかもいます。最初から目標を持ち、ある一定期間、勤めた後に独立する。僕はそうした働き方はもちろん「あり」だと思っています。
一方で、僕が大学院時代に起業したのは、もうちょっと消極的な理由からでした(苦笑)。新卒で入社してうまくやっていく自信がなかったので、友人と会社を作って試しにやってみたわけです。大学には少数ですがそういう進路を取る人もいて、社畜にされるぐらいなら自分たちも挑戦してみようかな、と考えたのです。でも残念ながら事業はうまくはいかず、結局、大学院修了後にソフトウェア開発をしている企業へ就職しました。
──ソフトウエア開発会社といえば、サービス残業や徹夜勤務もあたりまえで「社畜量産業界の有力候補?」との声も聞こえてきますが、日野さんのお勤めになった会社の環境は?
日野:服装は自由でしたが、基本的に朝には出勤してミーティングに出ていました。ソフトウエアの仕事には厳守すべき納期があります。この納期前になると泊まり込みをする人も出てきます。僕は「絶対に泊まり込みはしない」と決めていたので、タクシーを使ってでも帰っていましたが、中には泊まり込みを続けて、ほとんど会社に住んでいるような状態になる人もいましたね。
また、インターネット上で稼働しているソフトウエアを手掛けていましたので、アクセス過多などでトラブルが発生した際の「緊急対応」は、曜日・時間を問わず、よくありました。休日に遊びに出掛けている先でアラートメールを受け取り、真っ青になるようなことも少なくなかったですね。ただ、残業代はしっかりと支給してくれる会社でした。
宇都宮:会社というのは、社員に残業をさせたら「残業代を払う」、これは本来、あたりまえのことなんですけどね。労働基準法で定められた法定労働時間は1日8時間で、週に40時間です。就業規則や雇用契約で決められた社員の所定労働時間が1日7時間、1週間35時間だったとしましょう。この社員がある日10時間働いて3時間残業した場合、残業時間のうちの1時間に関しては、法定内残業なので割増賃金はもらえません。残りの残業2時間に関しては、法定外残業となるので、割増賃金をもらえることになります。
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