セブンが「高圧姿勢」をコロナ禍で改めた事情 過去最大規模の「加盟店支援策」を実施へ

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今回、過去最大規模の手厚い支援策を掲げた背景には、コンビニ経営の急速な環境変化がある。

これまでコンビニは出店を加速し、規模の拡大を追求してきた。だが、出店網が広がりすぎ、1店舗あたりの売上高が頭打ち状態にあるため、各社とも過度な出店計画を見直している。セブンも2020年2月期における国内出店数は782店、退店数703店で店舗純増数は79にとどまった(2019年2月期は純増616)。

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硬直的な運営スタイルにも批判が高まっていた。人手不足が深刻化し、アルバイトの賃金が上昇する中で、時短営業など加盟店ごとの柔軟な運営を認めてこなかった。2019年2月に大阪府・東大阪のセブン加盟店オーナーが独自の判断で24時間営業をやめると、契約違反だとして契約解除を通告。こういった本部の姿勢が「高圧的」と問題視され、経営が厳しくなる加盟店オーナーからの反発も日増しに高まっていった。

このように経営を取り巻く環境が変わってきたところに、新型コロナが直撃。営業努力にかかわらず売り上げが大幅に落ち込む店舗が多数現れた。こういった危機的な事態を受けて、セブン&アイHDは「本部と加盟店が一体になってこの事態を乗り切るために支援している」(広報)と強調する。

コロナで変わる加盟店とのかかわり方

大量出店を前提に、全国一律の硬直的な運営姿勢で業容を拡大してきたセブンだが、今後は加盟店や地域事情に寄り添った柔軟な運営スタイルを模索する可能性がある。

都内でセブンを経営するあるオーナーは、「本部が加盟店に本気で向き合い始めた第一歩として、今回の支援策を高く評価している。今までのセブンは本部の利益を最大化することを目標にしていたが、加盟店を苦しめてはいけないと気づいたのではないか。コンビニ業界の大きな転換点になるかもしれない」と語る。

ファミリーマートも独自の支援策を打ち出した(撮影:今井康一)

競合のファミマやローソンも、新型コロナ対策として加盟店への支援策を打ち出している。

ファミマは加盟店オーナーの収入が減少した店舗への見舞金などで、総額20億円の支援策を公表した。ローソンは感染した従業員が現れて休業した店舗に見舞金を給付するなど、加盟店支援に8月までの間に総額31億円をかける計画だ。

ただ、コンビニ経営に詳しい業界関係者はセブンの加盟店対策について、「既存店売上高の落ち込みが最も少ないのに、手厚い支援策を公表している」とその内容を評価する。

環境変化に加えてコロナ危機が後押しした形となり、本部と加盟店のかかわり方を抜本的に見直し始めたセブン。とはいえ、コロナ収束後は消費者の購買行動が変化し、これまで好立地とされてきた店舗ロケーションも見直される可能性が高い。国内で独自進化を遂げたコンビニ業界を牽引してきたセブンは、難しい局面を迎えることになる。

遠山 綾乃 東洋経済 記者

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とおやま あやの / Ayano Toyama

東京外国語大学フランス語専攻卒。在学中に仏ボルドー政治学院へ留学。精密機器、電子部品、医療機器、コンビニ、外食業界を経て、ベアリングなど機械業界を担当。趣味はミュージカル観劇。

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