NTTセット割解禁なら暗黒時代へ逆戻り KDDI田中社長が規制緩和に猛反発

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――最大手がセット割をすることで、通信費の引き下げがこれまで以上に進むという見方もできる。

目先の話だけなら、ユーザーは「安くなっていい」と思うかもしれないが、その後、どういう世界になるかは明らか。光回線では各社の競争が技術の進歩を後押しし、料金を下げ、世界一のインフラが整備された。モバイルも世界で2~3番目のインフラだ。しかし、競争がなくなれば、東京、大阪間の通話が3分間400円以上かかっていた20年前に逆戻りすることになる。こうした危機感は、ソフトバンクとも一致している。

――インフラとして、固定回線の重要度が増していくと主張している。

携帯基地局の9割以上は光ファイバーの有線につながっているからだ。現在の3.9世代と呼ばれるLTEから新しい通信規格に移行すると、データ通信量の増加に対応するため、基地局を小型化し、より細かく配置するようになる。すると、基地局につながる固定回線のコストも増えていく。その時、NTTが光回線を独占していたら、卸値が安くなるわけがない。これは恐怖だ。つまり、モバイルの議論にもかかわらず、論点としては固定になるのでわかりにくい。モバイルのコストは固定が作る時代になるということを、ぜひとも主張していきたい。

そのためには、現在の競争状態を維持しなければならない。KDDIも光回線でエリア化できているのは、関東地方と子会社による中部地方だけ。ケイ・オプティコムさんなど旧電力系でやられている会社もあるが、NTT西日本も値下げに動くなど、環境は厳しい。巨大企業に戦いを挑んでいるのが実情だろう。

田中社長は「公正な議論をしてほしい」と語る

――ソフトバンクの孫正義社長は「ドコモがわれわれと同じ土俵で戦うのは構わない」と発言している。田中社長の考えは?

そもそも、ドコモとNTT東西が連携するのはあり得ないこと。ドコモに課された禁止行為について、何がよいのか、悪いのかという点を明確に議論するのはいいと思っている。

孫さんも、ニュートラルに考えて、競争に影響を及ぼさない分野について「構わない」と言っているだけだと思う。十把一絡げに判断してしまうのは危険だ。たとえば、グループの金融会社「NTTファイナンス」との連携はどうなのか、これはまずい。すでにグループで一括請求をしてしまっているが、規制の趣旨からはずれている。ドコモを分離する流れから逆戻りし、NTTグループに有利な規制となれば、われわれはビジネスで困るし、国民にとってもよくない。公正な議論をしてほしい。

キャッシュバック競争を仕掛けたのはドコモだ

――現在の競争環境について聞きたい。3月商戦のキャッシュバックはやりすぎだったのでは?

競争を仕掛けたのはドコモだろう。iPhoneは新規も機種変更も0円にしている。3月後半にドコモがアクセルを踏んで、KDDIが追随する構図だった。当社も積極的に新規ユーザーを開拓する方針だったが、ここまでキャッシュバックが進むとは思っていなかった。コストコントロールはしているつもりだが、適切ではなかった。総務省から指導があったとの情報もあるが、実際にはなかったと思う。高額なキャッシュバックはいつまでも継続できるわけがなく、普通に考えれば年度末で終わるものだ。

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