コロナショックはグローバル化に「とどめ」刺す 反グローバルの動きはすでに始まっていた

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グローバリゼーションが巻き戻され国内回帰が本格化するのか(写真:FUTO / PIXTA)

筆者は先週の東洋経済オンラインのコラム『アフターコロナで待つのはインフレかデフレか』で、アフターコロナの世界においては「効率よりも安全」の価値観が国家の法規制や企業経営にまで影響を与える結果、脱グローバルや国内回帰が1つの潮流になるリスクを指摘した。

また、その前の『アフターコロナで注目したい世界の「日本化」』で確認したように、筆者はアフターコロナの世界では「民間部門の貯蓄過剰」が幅を利かせるため、どちらかといえばデフレ圧力のほうが大きくなる展開をメインシナリオとしている。

しかし、リーマンショック後、金融機関に課された過剰な規制を思えば、危機前からは想像もつかないほど企業部門が行動変容を求められる可能性はある。今回はマスクのような医療物資を中国生産に依存していた結果、社会的混乱が起きた。そのような経験を踏まえ、多少、コストアップに目をつぶっても「国内でさまざまな財を賄えたほうが国家のリスクマネジメント上適切」という判断が広がるかもしれない。

仮にアフターコロナの世界でインフレシナリオが現実になるとすれば、こうしてグローバリゼーションの巻き戻しが世界経済の非効率化を進め、「コスト高の世界」が到来するというコースではないかと筆者は考えている。

反グローバルの動きは10年前から

コロナショックの衝撃によって記憶が薄れがちだが、より以前からグローバリゼーションの巻き戻しの兆候はあった。おそらく多くの人々がそれを意識し始めたのは、英国が国民投票でEU(欧州連合)離脱を決め、アメリカでトランプ大統領が当選するという政治的大事件の続いた2016年だろう。特にトランプ大統領は、就任前から先鋭化した保護主義の姿勢を露わにして、就任後は主要貿易相手国に対して矢継ぎ早に関税・非関税障壁を展開するなど、反グローバルの象徴のような存在といって差し支えない。

しかし、関連データに目をやれば、グローバリゼーションの巻き戻しは2016年以前から進んでいた。それがトランプ政権の政策運営で激化し、コロナショックによって「とどめ」を刺されようとしているという見方が適切なのかもしれない。

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