コロナで経営危機の鉄道、現行法で救済可能か 各社個別の努力に限界、救済策を検討すべき

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また、この欠損補助制度は、経営努力がおろそかになるといった理由や、当時進められていた旧国鉄の特定地方交通線の第三セクター鉄道化の際の転換交付金制度との整合性などの理由により、1997(平成9)年度で廃止されており現存しない。

この鉄道軌道整備法による補助制度を今回の事態に生かすことはできないだろうか。もちろん、単に補助制度を復活させたとしても、法文上の問題でそのまま新型コロナウイルス感染症の影響に苦しむ鉄道を救うことはできない。

しかし、鉄道軌道整備法の目的は、「鉄道事業に対する特別の助成措置を講じて鉄道の整備を図ることにより、産業の発達及び民生の安定に寄与すること」にある(同法第1条)。

コロナは自然の猛威

今回の世界規模の同時多発的感染症拡大およびそれによる人の流動の極小化・経済活動の委縮は、現代社会において誰もが想定していなかった事態である。

どこの誰が、これほどまでの東海道新幹線の乗客大幅減などを予測したであろうか。今回の事態においては、鉄道事業に対して特別の助成を図る必要があり、それが産業の発達や民生の安定に寄与することは疑いがない。

個々の鉄道事業者にとって、新型コロナウイルス感染症が列車利用の激減、運転本数の削減をもたらしたということは、なすすべのない自然の猛威がその鉄道の社会的価値と効用を大規模に毀損したということである。

自然災害による被害の場合は、短期集中で局所的であり、かつ、その自然現象が収まる過程を追うことができ、収まりさえすれば物理的な復旧を行うことで鉄道を再度活性化させることができる。

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