「倒産ドミノ」回避後に迫る景気後退の超危険 すべての企業を救う「しわ寄せ」は国民に行く

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ただ、緊急融資では、麻生財務相が3月6日談話で金融機関に「事業者の資金繰り緩和に向けて全力をあげて丁寧かつ迅速に取り組むこと」を強く要求しており、金融機関は原則として融資に応じています。

無担保の融資制度も多く、信用度が低い企業にも門戸を広げています。持続化給付金では、私の知る限り、申請者が今後の事業継続を意思表示すれば、申請段階でその真偽までは確認していません。というより、確かめようがありません。

このように、本来は一時的に経営状態が悪化した企業を救うはずが、実質的に「倒産の危機にあるすべての企業を救おう!」という方針になっているのです。そして、広く国民を巻き込んだ緊急事態ということもあって、マスコミでもネットでも、この「すべてを救え!」という政策への批判はあまり聞こえません。

3つの副作用と問題点

「すべてを救え!」の支援は、間違いなく倒産防止に効果を発揮します。倒産の減少は経済・国民生活にプラスです。しかし、国・自治体の政策には、マイナス面が付き物。長い目で見て、禍根を残すことはないでしょうか。3つの副作用・問題点が懸念されます。

第1に、「持続化給付金での不正受給」です。中小企業庁は「申請に不審な点があれば調査する」としていますが、明らかな不正はともかく、たとえば、計画倒産をたくらむ悪徳経営者が持続化給付金を受け取った後、「事業を続けようと思っていたけど、やっぱりダメになっちゃいました」と言えば、不正を追及するのは困難です。

近年、事業承継が問題になっており、400万社に及ぶ中小企業経営者の相当数が事業を継続するべきか悩んでいます。知り合いの70代の商店主は、「後継者不在で、近いうちに廃業するつもりです。いますぐ廃業しようか、(持続化給付金を)200万円もらってからにしようか迷っています」と正直に打ち明けてくれました。

次ページ2つ目の問題は「緊急融資の不良債権化」
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