益川敏英・京都産業大学教授(ノーベル物理学賞受賞者)--成果ばかりを求めたら大きな仕事は出てこない

益川敏英・京都産業大学教授(ノーベル物理学賞受賞者)--成果ばかりを求めたら大きな仕事は出てこない

--最近の大学生をご覧になって感じることは、どんなことでしょうか。

1980年代前後で、学生気質が大きく変わったような気がします。若者らしいハチャメチャなエネルギーを感じなくなった。授業には出ないが、自分の知りたいこと、面白そうなことは一生懸命勉強する。それでも、いざ試験となれば何とかクリアしてしまう。そうした学生が、60年代までは結構いたと思います。

これが変わったのには、70年代安保が関係しているのかもしれません。「自分たちの主張のためには何をやってもいい」と70年代にやりすぎて、80年代にその反動が来た。

そのせいなのか、いったん自分の専門はこれだと決めたら、そこから一歩もはみ出すようなことはしなくなった。僕は面白ければ何でもいいと、いろいろな研究テーマに“浮気”してきました。遊び心というのでしょうか。そういうムダなことはしない、というのが最近の若者の風潮ですね。
 
--ただ、研究者に対して具体的な研究成果を求める声が強まっているのも事実です。

短期的な成果だけを要求して、はたして本当に大きな仕事が出てくるのか。僕には疑問ですね。

確かに、論文を書けと尻をたたくわけだから、論文の数は増えますよ。でも、粒の小さい仕事ばかりになってしまうおそれがある。競争的資金をもらうために、一定の期間に確実に成果が出るような研究テーマを選ぶ。そこから20年、30年後に残る仕事が出てくるのかといえば、難しいのではないでしょうか。

特に、若い研究者が「競争的資金を取ってこい」と追い立てられています。それが習い性になってしまうと、多少年をとって、もう少し自由に研究できるようになっても「さあ、大きな仕事をしよう」という発想自体が出てこなくなってしまう。

研究者は、遊ばせておいたほうが、大きな仕事ができるんですよ。「これは研究しても何も出てこないかもしれないが、自分は面白そうだからやってみたい」。そうした遊び心を許容することが大学には必要なのです。限られた国家予算の中で、それをどう具体的に実現していくかは難しい問題ではあるのですが。

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