法人減税の機運は高まっている 政府税制調査会法人課税DGの大田弘子座長に聞く

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企業の選択をゆがめないように租税特別措置を見直す

――税調のディスカッション・グループ(DG)ではまず課税ベースの拡大から議論を始めました。

やはり難しいのが租税特別措置の扱い。これは既得権の塊のようなもので、廃止には抵抗がとても強い。3月末の会議でも「法人成り」の問題が議論された。日本の場合は個人事業よりも法人形態をとったほうが、税制上有利だからだ。

国の法人税だけみると、日本は飛び抜けて高いわけではないが、日本の場合、地方の法人課税の割合が高い。アメリカやドイツ、カナダは連邦制国家で、こういう国は地方の法人税率も高いが、日本は連邦制でもないのに、これだけ地方法人税が重い。でも、地方法人課税も見直すといえば、自治体から「財源をどうするんだ」という話が出る。

――反対だらけですね。

反対だらけ、壁だらけです。

――突破口はない?

ないです。一つ一つ、全部潰していくしかない。(DGでは)財源をどこに求めるかという議論ではなく、基本的に企業の選択をゆがめない形にするにはどうあればいいか、という議論をしたい。

企業は1年単位でビジネスをしているわけではなく、投資したものを長くかけて回収している。どこで損が出て、どこで利益になるかは、長期戦略だ。業種によっては、初期投資が非常に大きく、黒字になるまで時間がかかることがある。税はそういう企業の姿を踏まえて、考える。

――法人の7割が赤字法人で、法人税を負担していない現状をどうみますか。

もちろん税の歪みによるケースもある。だが、中には、収益をあげたくてもあげられない企業もある。なるべく企業が所得をあげて、税を払えるようにしよう、というのがアベノミクスの第三の矢だ。だから、法人税を納めていない企業が多いので、法人税率は下げない、というのでなく、きちんと稼いで、きちんと税金を納める企業が増えるように、規制改革もやる。法人税の引き下げもやる、新陳代謝もやる、ということだと思う。

(撮影:ヒダキトモコ)

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