再び中古車両頼み?日本の鉄道輸出「前途多難」 輸入停止だったミャンマーに気動車無償譲渡

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関係者の話によれば、新潟地区に配置されているキハ40系列のうち、あと若干数も今後譲渡される見込みだという(その後、在ミャンマー日本国大使館の公式Facebookが更新され、追加で6両が譲渡されることが判明)。現在、1月に輸送された5両のうち一部が現地化改造を終え、ネピドー地区で試運転を行っている。今後ヤンゴン環状線で運用予定とのことだ。

ミャンマー側の予算で改良工事が進むヤンゴン環状線。この区間はインドネシアの国営建設会社(WIKA)が受注していた(筆者撮影)

「環状線改良事業」については、2015年に約245億‬円の円借款契約が結ばれているが、これは信号システム及び車両導入に限られ、線路や施設などの土木部分についてはミャンマー側の予算で実施されることになった。また、円借款で導入する6両編成11本の新型車両だけでは環状線のすべての運用を賄うことはできず、その後も引き続き18両の既存の中古気動車を運用せざるを得ないこともJICA報告書から判明している。相当に予算が切迫していることがうかがえる。

今回の無償譲渡車計32両をもってしても車両は不足することになるが、状態の良い中古気動車を改修するなどして、延命させて対応するのではないだろうか。先の報告書でも、既存の中古気動車のうち50両程度は老朽化がそこまで進行しておらず、更新可能と判断されている。

「昭和の気動車」活躍は興味深いが…

よほどの遅延で円借款供与期間をオーバーしない限り、今回の新型車両の導入プロジェクト自体が消えるわけではないと思われる。だが、改良事業完成時に新型車両は間に合わないであろう。早ければ来年の今頃には、キハ40系列が新しくなったヤンゴン環状線を軽快に走り出すことになるだろう。

現在のヤンゴン環状線の主力はJR各社から譲渡された中古気動車。軌道やホームは改良工事開始前の姿(筆者撮影)

昭和生まれの国鉄型気動車が第2の活躍の場を得て異国の地で人々を運び続けるというのは、うれしい話である。日本ではもはや見られない、堂々6両編成のキハが続々と走るというのは新たな名物になるかもしれない。しかも、ヤンゴン―マンダレー間に投入される新型車両を含めて、新潟育ち・新潟生まれというのがまた面白い。雪国の車両が揃って南国を走るとは何たる偶然だろうか。

一方でそんなところに喜びを感じるのは日本人、いや鉄道好きくらいであるのも事実だろう。新車が入るに越したことはない。ましてや日本タイドの円借款(今回、日本企業の海外法人も応札可能なJUMP方式を採用)にもかかわらず、予定していた電気式気動車を納入する企業が現れなかったというのであれば残念な話だ。どうしてこんなことが起きるのだろうか。

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