アベノマスク「耳が痛くて使えない」呆れた実態 輸入会社社長と厚労省マスクチームの言い訳

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介護施設などに配られたマスクと同じような、耳に掛かる部分も布製であるマスクが、確かにベトナムでも売られていることがわかった。ただし、大半は伸縮性のあるゴムなどが使われているという。どの国でも顔のサイズに個人差があるので、当然のことだ。

それなのに、樋山氏はサイズ調整がきかない仕様で、ベトナムの会社に製造させた。可能性として考えられるのは、サイズを犠牲にした、コストダウンである。

また、以前の取材に対して、ユースビオ社にはマスクの製造や販売経験はないと、社長の樋山氏は答えている。

マスクは、「感染拡大の防止」が目的のはずである。その重要な目的を担うマスクの供給を、素人というべき会社に依頼したのは、厚生労働省だった。

厚労省マスクチームのあきれた回答

冒頭の介護施設に送られてきた、ベトナム製のマスクに添付されていた、厚労省医政局経済課の文書には、布マスクの配布に関する問い合わせ先の電話番号が掲載されている。男性には小さすぎて、うまく装着できないことが続出していることについて、どう対応しているのか尋ねてみたが、話がかみ合わない。ベトナム製の立体的なマスクの存在自体を把握していないというのだ。

詳しく聞いてみると、電話対応をしているのは、厚労省の職員ではなく、マニュアルに従って答える外部スタッフだった。厚労省経済課には、通称・マスクチームが設置されている。経済産業省、総務省、文部科学省などからの応援も加わった混成部隊だ。4月からマスクチームに加わった職員にベトナム製のマスクについて尋ねると、こんな答えが返ってきた。

「介護施設など55万カ所に向けた、布マスク2000万枚は、4月下旬までに1回目の配布を完了しました。

(クレームは?)いただいていないと思いますね」

厚労省にクレームが届いていないというのは信じがたいが、もし本当だとしても不思議ではない。なぜなら厚労省は許認可や介護保険の請求などで、介護施設などに対して、絶大な権力を持っているからだ。仮にクレームを上げて厚労省ににらまれたら、事業運営で不都合が生じる可能性がある。

「ユースビオ(ベトナム製)のマスクが、個包装ではなかったというご指摘ですが、3月に調達したマスクは各社様も同じく個包装ではありませんでした。スピードを優先したからです。3月の調達分に関しては、こちらから仕様書は示していません。立体式というか、ガーゼマスクじゃない形状は、ユースビオさんだけでした」(前述の厚労省マスクチームの職員)

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