物価目標達成へ、自信深める日銀

需給改善で物価の「実力」に期待

4月8日、日銀が異次元緩和政策による2%の物価安定目標の達成に自信を深めている。写真は黒田東彦総裁。ダボスで1月撮影(2014年 ロイター/Denis Balibouse)

[東京 8日 ロイター] -日銀が異次元緩和政策による2%の物価安定目標の達成に自信を深めている。物価上昇要因が昨年までの円安進行から、雇用情勢を中心とした需給環境の改善という実力ベースに移行しつつあることが背景にある。

追加緩和の行方は、消費増税後の需要減が一巡する時期や、外需動向が左右しそうだ。

<物価目標達成、「確信持っている」>

消費税率引き上げ直後となった8日の会見で、黒田東彦日銀総裁は、強気のコメントが目立った。

日銀が掲げる2%の物価安定目標達成に関し、自信を問われた総裁は「従来同様、確信を持っている」と言明した。

「従来同様」と前置きしたものの、実は「確信」との強い表現を使ったことはあまりない。消費者物価指数(除く生鮮、コアCPI)の前年比が1%台前半まで上昇。安倍晋三首相らによる「もはやデフレという状況ではなくなりつつある」とする政府側の発言も引用し、そうした見解は「正しい」と指摘。日本経済はデフレから脱却しつつあるとの認識を示した。

<需給ギャップ、ゼロに>

黒田総裁の発言からみえる自信の背景には、物価の押し上げ要因が昨年までの円安進行やエネルギー価格の上昇から、労働や設備などの需給環境の改善に移行しつつある現実がある。

総裁は会見で、足元の需給ギャップについて「失業率や短観のさまざまなデータからみると、ほとんどゼロに近くなっている」と、ほぼ解消されているとの見方を明らかにした。

特に雇用面は「予想以上に改善している」と強調。日銀の試算する構造的失業率は「3%台半ば」とし、2月の完全失業率3.6%はそれに「ほぼ等しい」と指摘した。

こうした雇用情勢のひっ迫が、賃金の上昇をもたらし、企業の価格転嫁も進みやすくなるという、実態を伴った実力ベースの物価上昇圧力に変質しつつあるとの見立てといえる。

総裁の主張について、政府関係者も「需給環境の改善を背景とした物価上昇が実現すれば、持続的な物価上昇につながりやすい」と述べており、日銀が目指す「安定的な物価上昇」の実現に期待感を示している。

<増税後の動向、デイリーにチェック>

総裁は消費増税の影響についても、今夏以降に減衰し、その後の景気は再び回復軌道に復帰するとの認識を示した。

ただ、日銀の想定と違った展開になることへの配慮も怠っておらず、消費増税後の販売や価格の動向について、デイリーで捕捉していることも明らかにした。

そのうえで駆け込み需要の反動減を初めとした経済・物価への具体的な影響は「もう少しよくみてみないとわからない」と述べ、「油断はしていない」との構えもみせた。

同時に海外情勢が、現在のシナリオ上の歩みに対する大きなリスクになりうると感じさせる発言も出た。特にウクライナ情勢はG20財務相・中銀総裁会議でもテーマになる可能性を指摘し、地政学的リスクが金融市場や世界経済に与える悪影響について懸念していることもにじませた。

日銀では4月以降に輸出が回復に向かうとみているが、ウクライナ情勢や中国経済など海外情勢には引き続き不透明感が漂う。

この日の会見を受け、市場では4月中の追加緩和の可能性は後退したとの声が広がっているものの、依然として秋までの期間を想定した追加緩和観測はくすぶり続けている。

足元で1%台前半で推移する消費者物価が、消費増税の下押し圧力を跳ね除け、2%に向かって年後半から再び上昇圧力を強めていけるのかどうか。15年10月からの10%への消費再増税の決断も含め、多様な変数が黒田日銀の前に待ち構えている。

(伊藤純夫 編集:田巻一彦)

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