猛省が必要な「宇宙人首相」と「剛腕幹事長」

猛省が必要な「宇宙人首相」と「剛腕幹事長」

塩田潮

 中国の次期国家主席と目される習副主席が来日して15日に天皇と会見した。中国側のごり押しを日本政府が聞き入れたために「天皇の政治利用」という批判が噴出したが、この事件は4つの大きな問題を提起した。

 象徴天皇制での天皇の行為と政治の関係、民主党政権の対中外交、「政策決定の内閣一元化」と内閣・与党の関係、内閣と宮内庁という「政・官」の関係である。中でも第1の問題が大きい。この点については12月21日発売の拙著『憲法政戦』でも触れたが、天皇の行為には、国事行為(憲法7条)、憲法が認めた国家機関としての天皇の公的行為、私人としての私的行為がある。外国要人との会見は二番目の公的行為の一つで、憲法上許されないわけではないが、政治的に無権限で無答責の象徴天皇制の下では、国事行為同様、内閣の助言と承認を必要とし、責任は内閣が負うと解されている。

 そこで、決定権を持つ鳩山内閣は日中関係の将来を考えて、政治判断で会見を決めた。そのために「政治利用」と攻撃を受けたが、今回は「天皇の政治利用」を図ったのは中国で、それに従った点が問題である。
 だが、逆に会見を断って、それで日中関係が悪化した場合、中国側は反対の意味で日本の決定に対して「天皇の政治利用」と言い立てたかもしれない。それは中国側の言いがかりと切って捨てることは可能だが、国家機関としての天皇はもともと存在自体が政治的で、「政治と天皇」の問題はどこまでもつきまとう。

 重要なのは国政を担う政治家たちの基本姿勢である。国民主権を謳う憲法は「天皇と国政の遮断」を明確にした。政治リーダーは「天皇も含め、使えるカードはなんでも使う」という手法を排し、天皇を頼りにしたり利用したりしないという姿勢を内外に向かって明確にすべきだ。
 憲法上の制約だけでなく、それが成熟した民主主義の国のリーダーのあるべき姿ではないか。その点で「宇宙人首相」も「剛腕幹事長」も猛省が必要だろう。
(写真:尾形文繁)
塩田潮(しおた・うしお)
ノンフィクション作家・評論家。
1946(昭和21)年、高知県生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科を卒業。
処女作『霞が関が震えた日』で第5回講談社ノンフィクション賞を受賞。著書は他に『大いなる影法師-代議士秘書の野望と挫折』『「昭和の教祖」安岡正篤の真実』『日本国憲法をつくった男-宰相幣原喜重郎』『「昭和の怪物」岸信介の真実』『金融崩壊-昭和経済恐慌からのメッセージ』『郵政最終戦争』『田中角栄失脚』『出処進退の研究-政治家の本質は退き際に表れる』『安倍晋三の力量』『昭和30年代-「奇跡」と呼ばれた時代の開拓者たち』『危機の政権』など多数
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