ウクライナ危機は最悪期を過ぎた 丸紅経済研究所の榎本シニア・アナリストに聞く

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――今後の危機の行方をどう見るか。

3月29日がターニングポイントになったと見ている。その日を境に、プーチン大統領のほうから欧米の交渉相手に対し電話をかけるようになったとされ、歩み寄りの方向へ姿勢が転換したと考えられるからだ。危機の最悪期は過ぎたといえるだろう。

3月24日のG7による「ハーグ宣言」では、「ロシアが現状をエスカレートさせる場合、ロシア経済に重大な影響を与える制裁を強化する」とされたが、厳しい制裁は実際に発動しなくても十分な効果を与えている。ここでは米国も、力に頼った過去の外交の反省が生かされた。

もっとも、具体的にどういう譲歩が成立するかは依然不透明だ。欧米側は、ロシアのクリミア編入の撤回やウクライナ国境地帯に展開したロシア軍の撤収を要求している。

一方、ロシア側はウクライナ新政権による民族主義的政策の修正やウクライナの連邦制導入(自治権拡大)の要求もあるが、最も望んでいるのはウクライナのNATO加盟阻止だろう。妥協案がまとまらず、うやむやなまま、膠着状態が長期化する可能性もある。

日ロ経済関係への影響は軽微

――日本経済に与える影響は。

危機が最悪期を過ぎたと考えれば、日本経済への影響は軽微だろう。これまでも日本政府はロシアに対して明確な経済制裁を行っておらず、さらなる制裁も考えにくい。

日本のロシアとの経済関係は対中国、対米国に比べると小さい。2013年の対ロ輸出は110億ドルで、日本の輸出全体の約2%。対ロ輸入は236億ドルで、シェアは約3%だ。

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