岩田健太郎「世界中がコロナ甘く見ていた理由」 7番目のコロナは「時限爆弾」のようなもの

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この問題が出てきた当初に、日本へチャーター便で最初に帰ってきた人の中に、症状の出た人が3人ほどいました。彼らが入院したときにも「これは風邪みたいなものなので、みんな自然に治りますよ」との学会発表があったりと、専門家の間でも割と軽く捉えていたところがありました。

でも、それこそが危ないところなんです。というのも、8割の人はたしかに勝手に治っちゃうんですけど、これは逆に言えば残り2割の人は勝手には治らないってことですよね。

なぜ「感染拡大」防止が困難だったか?

2割、つまり5人に1人って結構な割合です。例えば10人程度の感染であれば、社会的にはどうってことはないけれど、500〜1000人規模の感染になるとかなりの問題になってくるし、武漢のように5万人もの感染者が出てくると、必然的にすごい数の方が重症化して、結果、何千人という方が亡くなってしまう。

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罹り始めは症状が軽いので、みんな自分が罹患していることに気づかない。「ちょっと調子が悪いかな」くらいだから、仕事はするし、遊びにも行くし、公共交通機関だって使ってしまいます。

SARSやインフルエンザなら、すごくきつい症状が初めにボーンと出るので、多くの人は仕事を休むし、家で寝てるし、あるいは病院に行くわけです。少なくとも自分が病気である自覚はあるし、他人にうつすリスクがある自覚だってあるでしょう。

だけど今回の新型コロナウイルスは時限爆弾みたいなもので、ずっと普通に過ごして多くの人にうつす機会を宿主に与えておいてから、2割の人はドンと悪くなる。だからこそ拡がりを止めるのが極めて困難な、ものすごくタチが悪いウイルスなんです。

岩田 健太郎 神戸大学教授

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いわた けんたろう / Kentaro Iwata

1971年、島根県生まれ。神戸大学大学院医学研究科・微生物感染症学講座感染治療学分野教授。神戸大学都市安全研究センター教授。ニューヨークで炭疽菌テロ、北京でSARS流行時、またアフリカではエボラ出血熱の臨床を経験。帰国後は亀田総合病院(千葉県)に勤務。感染症内科部長、同総合診療・感染症科部長を歴任する。著書に『「感染症パニック」を防げ! ?リスク・コミュニケーション入門』『予防接種は「効く」のか?』『1秒もムダに生きない』(以上が光文社新書))など著書多数。

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