ポジティブ独身シニアの生活と本音に肉迫。ひとりの人生も、いいじゃないか!

独身者のライフスタイルは、家族持ち以上に多彩だ

したい事をひたすら続けて気づいたらこの歳だった
 69歳女性

「したいことをひたすら続けて、いつのまにかこの歳になってたという感じね」。下村孝子さん(69・仮名)のわらじは何足もある。

自宅での塾経営が一応“本業”。敬虔なクリスチャンの下村さんは、所属する教会が設立した厚生施設の学園長として長く活躍。その経験を買われて東京都や区の教育、女性、環境など多彩な分野の委員も務める。市民団体から何かと頼られることも多く、地元の棋友会のメンバーでもある。「数えてみたら、何だかんだ30くらいの会合に会費払ってるの。自分でも驚いちゃった」。

下村さんの原点は学生時代にさかのぼる。「父と母を比べると、母のほうが絶対に賢いのに、なぜ男性のほうが偉そうなのか、ずっと不思議だった。ある日『そうか、経済力のせいだ』と気づいた。稼ぐ人が偉い国が日本なんだってね」。

大学では労働法を専攻。女性の地位向上に奮闘する人たちとの出会いが、漠とした思いを確信に変えた。「周りも皆『女性が自分でしたいことをするには、経済力をつけるべきよ』という意見だった。私は、それをずっと続けているだけ」。

卒業後は製鉄会社に就職。「楽しい会社だったけど、海外を見たい気持ちも強くて」数年で退職し、以来、現在の生活を続けてきた。教会関係で英国で半年研修、米サンフランシスコで4年間、日本語教員を務めたこともある。「20年近く外国生活をした祖父が、5人兄弟のうち私を『あれは放浪性があるよ』と言っていた。そのとおりになった」と笑う。

結婚を考えたことはまるきりない。「人生の節目となる30歳だとか40歳のときに、だいたい日本にいないからかもしれない」。寂しさを感じたこともない。

というのも、自宅にはもう一人シングルがいる。ピアノ講師で生計を立てる独身の妹だ。「マメな妹なの。料理もお菓子作りも玄人はだしだから、お任せよ」という下村さんは、炊事はいっさいしたことがない。シングル2人が共存する、珍しくも愉快な暮らしだ。

「とにかく人様の5倍くらい働いてきた感じ。寝る以外はつねに動いている。ご飯食べているときも書類を見ながら、という生活ね」。塾を兼ねた4階建ての自宅の階段を、下村さんは軽やかに上り下りする。

下村さんは近く、「ピースボート」で世界一周の旅に出る。ここ数年、教会関連の特定養護施設の立ち上げに骨身を削ったので、一息つきたくなった。

若いころはアマゾンでワニ狩りまでした強者だが、「一人旅は面倒くさくなってきた。じゃ、船に乗ればいいやと。かといって単なるクルーズなんて退屈よ」。

船の中では、これまで旅した先のことをまとめるつもり。海外地理検定2級の勉強もする予定だ。お酒もいけるクチの下村さんは「勉強もあるし、毎晩飲みたいから」と個室を選択したため、総額300万円の豪華旅行となった。走り続けた日常から解き放たれる、またとない100日間となりそうだ。

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