《中国・アジア市場攻略》パナソニックの本気示すドブ板調査、3・5億世帯を狙い農村向け専用製品開発へ

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《中国・アジア市場攻略》パナソニックの本気示すドブ板調査、3・5億世帯を狙い農村向け専用製品開発へ

2009年10月初旬、山水画で有名な桂林から自動車で4時間の広西チワン族自治区来賓市。そこからさらに1時間ほど走った農村をパナソニックの中国生活研究中心(センター)のメンバー3人が訪れた。4日間滞在し農家を調査して回ったのだ。

この村に電気は通っているが、一部の地域にはまだ水道が引かれていない。洗濯機の普及率は2~3割、冷蔵庫は1割程度。テレビはほとんどの家庭にあるものの、まだブラウン管型が大半だ。携帯電話はほぼ大人全員が持っている。

各農家で部屋の間取り、家具を含めた部屋中すべてを採寸、家電の使われ方などを念入りに調査した。洗濯機や冷蔵庫の普及率が低いので、そもそも何で洗濯しているのか、食料の保存方法は何か、から調べ上げた。井戸水や川の水で洗濯している農家が少なくなく、洗濯機がある家庭でも、洗うのは手洗いで、脱水のみに洗濯機を使う例が見られた。

同じ時期、生活研の別の2人が四川省・成都から自動車で9時間の巴中市平昌県の農村に6日間滞在していた。生活研の5人で合計20軒の農家を調査し、農村向け家電製品のあるべき姿を探った。

「中国の都市部では水は貴重なので節水機能が重要だが、井戸水が豊富な農村向けなら節水機能は必要ではなく、水道がなくても使える全自動洗濯機が適するかもしれない。脱水機能に特化した洗濯機というのもあるかもしれない」(松下電器〈中国〉有限公司の三善徹・中国生活研究中心所長)。

パナソニックが中国に生活研究中心を作ったのは2005年。中国の消費者の生活行動や潜在ニーズを深く研究、生活習慣に密着し地域性が強い白モノ家電の製品企画・開発に生かすためだ。

従来は沿海部の高所得世帯、世帯収入が年18万元(約230万円)以上の富裕層がターゲットで、調査も大都市や大都市近郊の裕福な農村だった。しかし、昨年のリーマンショック以降、先進国の経済成長は鈍化、主役は新興国に移った。それも少数の富裕層ではなく、圧倒的多数のいる中間所得層“ボリュームゾーン”の市場攻略が成長のキーになった。

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