コロナで困る人に「災害対策基本法」が有効な訳 「自然災害とみなして対応を」弁護士の提言

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「夜間のラインを止めている工場からは『みなし失業保険』を使えないかという問い合わせがきています。需要はあるんです。宮城県は東日本大震災があり、やっと立ち直ってきたと思ったら、昨年の台風があり、今回の新型コロナウイルス感染症です。個人や中小事業者を支援できなければ、(それらは)つぶれます。

厚労省の雇用調整助成金はいつ支給されるのかわかりません。社員に休業補償を支払いたくても資金がありません。新型コロナウイルス感染症の対策として社会福祉協議会が実施している緊急小口融資を申し込んだのに断られた人もいて、破産の相談も受けています。スピードがないとどうしようもありません」

こうした実情にどう対応するのか。災対法が適用される災害については、政令の変更で可能だ。しかし、そこには低くて厚い壁があると津久井弁護士は言う。

災害対策基本法の概要を説明する内閣府の資料

「今回のコロナを災害とみなすことはできないか、と国会議員に聞いたことがあります。その議員は官僚に聞いてくれたのですが、次のように反論されたそうです。

政府は知恵を絞り、国民の生活を支えよ

『政令で指定はできる。しかし、もし入れると、中央防災会議(会長=総理大臣)の防災基本計画に感染症対策を含める必要がある。そうなると、都道府県の地域防災計画にも含めないといけないので調整が必要になる。だからできない』、と」

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「声を大にして言いたいのは、2つのことです。1つは、政府はちゃんと知恵を絞りなさい、ということ。もう1つは、新型コロナウイルス感染症対策は、予防だけでなく生活を支えることが必要。そこをきちんと支援してくれ、ということです。今の自宅待機は、自然災害で大量に生まれる在宅被災者と同じです。個別対応ができないと孤立死が増える。コロナ関連死も起きる。事業再建から取り残されて生活再建もできなくなる人が出てきます」

取材:木野龍逸=「フロントラインプレス(Frontline Press)」

Frontline Press

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「誰も知らない世界を 誰もが知る世界に」を掲げる取材記者グループ(代表=高田昌幸・東京都市大学メディア情報学部教授)。2019年5月に合同会社を設立して正式に発足。調査報道や手触り感のあるルポを軸に、新しいかたちでニュースを世に送り出す。取材記者や研究者ら約40人が参加。スマートニュース社の子会社「スローニュース」による調査報道支援プログラムの第1号に選定(2019年)、東洋経済「オンラインアワード2020」の「ソーシャルインパクト賞」を受賞(2020年)。公式HP https://frontlinepress.jp

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