第2回 増え続けるサービス業の労働災害 ここが変わった! 新しい労働災害防止計画

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労災の多い「小売」「飲食」「社会福祉施設」

このような状況のなか、労働災害の防止について、国としてどう取り組もうとしているのでしょうか。

 今後、国が取り組んでいくべき労働災害の防止に関する方針ともいえるのが、2013年に、新しく定められた「労働災害防止計画」です。これは、労働災害を防止・減少させるために国が重点的に取り組む事項を定めた5年ごとの中期計画のことです。

 新しい中期計画のことを「第12次労働災害防止計画」といい、平成25年度を初年度とし平成29年度までです。この計画のトピックスの一つとして、サービス業などが重点業種として位置付けられたことでしょう。

特に災害の多い「小売業」「社会福祉施設」「飲食店」に対しては、具体的な目標値を掲げて集中的に取り組んでいくことを明確にしています。それだけ国としても見過ごせない状況になってきているとみてよいでしょう。

 これらの業種の特徴としては、重篤度の低い転倒などによる災害が多いということが挙げられます。重篤度が低いとはいえ、統計によれば、転倒による労働災害での平均休業日数は1ヵ月を超えていますし、休業日数が半年を超えるケースや、障害が残ってしまうケースなどもあります。決して、転倒だから軽い災害などと見くびってはいけません。

 建設業や製造業といった業種と比較すると、従業員の行動自体に対策が必要とされるという難しさがあります。また、今後もますますサービス業などで働く従業員の増加が見込まれることなどからも、対策が急務であることがいえるでしょう。それでは、国は具体的にどのように取り組んでいくことになるのでしょうか? ここでは、その一部について、触れましょう。

 サービス業などでは、非正規の従業員が多いという現場の傾向から、雇用形態にとらわれない安全衛生活動について、国が指導していくことはもちろんですが、実態に即した安全衛生管理体制の構築についても検討していくこととしています。また、それぞれの業種で特徴的な災害についての対策を講じるとしています。

 例えば、小売業では転倒による労働災害が多く発生しています(小売業全体の災害の約3割を占めています)。転倒ということがそもそも日常生活でも起こり得ることから、会社も従業員も転倒が災害であると意識が希薄です。そのため、転倒は災害だという意識をいかに浸透させ、向上させるかという対策をとっていくとしています。

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