チーズ値上げをもたらした国内外の構造問題 6年ぶり、大手各社が一斉値上げ

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実際、チーズが売上高の95%を占める六甲バターは、「今年1月からの輸入価格は、1年前と比べて20~25%上がった。とても厳しい」(IR担当者)と語る。原料高の影響で14年12月期は前期比約15%の営業減益を見込んでいる。

生乳取引額もアップ

輸入原料に加えて、国産原料である生乳の価格もじわじわと上がっている。ホクレン農業協同組合連合会などによると、13年度のチーズ用生乳価格は前年比約2%(1キログラム当たり1円)上がった。直近では最後となる価格引き下げがあった09年度と比べると、6~15%の上昇だ。

これは、新興国で肉食化が進んだことなどに起因する飼料価格の上昇が影響している。農林水産省のまとめでは、生乳100キログラムを生産するのに必要な費用は6690円(12年度、労働費除く)。09年度と比べると5.5%増加している。このうち、費用の半分以上を占める飼料費は6.7%も伸びている。

そもそも後継者不足による酪農家数の減少で、生乳生産量はここ数年、減少傾向にある。酪農や乳業の関係者で作る業界団体のJミルクは、13年度の生産量を前年度比1.9%減、14年度も0.5~1.5%減と見積もる。生産体制を維持するためにも、メーカーは取引価格を上げざるをえない。

「値上げはしたけれども、まだコスト上昇分の半分も転嫁できていない。今は次の策を練っている」(雪印広報)。4月の消費増税もあり、消費者は価格に一層敏感になっている。乳業メーカーにとっては厳しい状況がしばらく続きそうだ。

「週刊東洋経済」2014年4月5日号<3月31日発売>「価格を読む」に加筆)

田野 真由佳 東洋経済 記者

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たの まゆか / Mayuka Tano

2009年に大学を卒業後、時事通信社を経て東洋経済新報社に入社。小売りや食品業界を担当し、現在は会社四季報編集部に所属。幼児を育てながら時短勤務中。

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