東京都豊島区−−ワンルーム増殖に課税でストップ

一人暮らし増加が変える街の風景

単身世帯の増加と投資人気に支えられて増え続ける都心のワンルームマンション。だが、単身者向けワンルームの増加は、定住者を減らし、地域の少子高齢化を加速しかねない。「このままでは、まちづくり計画の外で、コミュニティの維持すら難しい街へ造り替えられてしまう」(豊島区税務課)。すでに単身者世帯が全世帯の半数を超えている豊島区では、ワンルームマンション建設を規制する「狭小住戸集合住宅税」を導入した。

 税導入に先立って、区は1996年から2001年に区内で建設された分譲型マンションのうち、25平方メートル以下のワンルームマンション1321戸を実態調査。それによると、区内在住の所有者はわずか5%、他府県在住が72%で、投資目的とみられる所有者が圧倒的だった。

 ワンルーム住民のうち住民登録をしていたのはわずか58%。ファミリーマンションの住民登録率90%と大きな差があった。また、02年に完成した都内の分譲型ワンルーム20棟(22~159戸)の広告に掲載された修繕積立金を調べると、30年後の積立累計額は1棟当たり平均4124万円。最高で1億3200万円、最低で931万円だった。これでは、十分な改修が期待できる金額を積んでいるとは言えまい。

住民税が入らないうえ
スラム化の懸念も


 区は市町村と違って固定資産税を課税できないため、住民税が主な歳入源だ。「住民登録する人がいなくなれば、行政サービスを維持できない。また、わずかな修繕費では、老朽化に伴って将来、スラム化するおそれすらある」(区税務課)。

 大繁華街・池袋を抱えていることもあって、危機感を募らせた区は、強制力や実効力に欠ける行政指導ではなく、ワンルームをファミリー型マンションに誘導するため、より強力な法定外普通税を04年6月から施行した。

 新税は、主にワンルームになるとみられる1戸29平方メートル未満の集合住宅の建築主に1戸当たり50万円を課税。個人が自宅や事務所を兼ねて建設する「庭先開発型」を除くため、1棟8戸以下のワンルームマンションは税免除とした。

 導入の結果、施行前5年間で年平均1069戸だった税対象のワンルームの着工件数は、施行後2年間年平均で736戸(施行前の04年度4~6月を含む)まで減った。しかし、05年度だけを見ると953戸と施行前の水準に戻っており、目立った抑制効果が出ているとは言いがたい。

 また、地元不動産業者によると、1戸29平方メートルをわずかに上回る規模のワンルームマンションが最近目立つという。西池袋地区に新築されたワンルームマンション2棟はいずれも29~30平方メートルの間取りだ。区の調査でも、50平方メートル未満(1戸29平方メートル未満でも1棟8戸以下の税対象外を含む)のマンションは施行前年平均838戸から施行後1836戸と倍以上に増え、課税対象にならないゆったりスペースのワンルームが増えていることをうかがわせる。

 それでも区税務課は「税の誘導効果は出ているのでは」と話し、09年度の見直しに向けた評価を始める。単身者の追い出しという批判には、30平方メートル未満の住宅が43%で23区平均29%を大きく上回ることから「単身者向け住宅はすでに十分」と応じる。「人口の都心回帰が進んでいる今こそ、家族で定住できる住環境整備を図らなければ」(同)。

 日本全体で単身世帯が急増していく今後、豊島区と同じ難問に直面する自治体も増えてきそうだ。
(週刊東洋経済07年6月9日号より)

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