第4回 タメ口だらけのドイツ・スポーツクラブ
柔道でもフラットな関係

✎ 1〜 ✎ 3 ✎ 4 ✎ 5 ✎ 最新
拡大
縮小

「われわれには<おまえ>と呼び合う文化がある」

それに対してドイツの社会では年齢序列の感覚はほとんどない。が、二人称に関していえば親称「ドゥ(Du/おまえ、君)」と社交称「ジー(Sie/あなた)」の2種類がある。「あなた」から「おまえ」に変わるタイミングは世代などの属性によっても異なり、ネイティブでも迷う。日本語の感覚でいえば、いつからタメ口で話せるか、必要以上の丁寧語や敬語をいつから外すか、というのと近いのかもしれない。

 ただスポーツクラブでははっきりしている。メンバーになったとたん「おまえ」である。たとえ16歳の若者が50歳の大学教授と話すときでも、メンバー同士なら「おまえ」なのだ。名づけて「タメ口カルチャー」だ。

 当連載でも以前触れたが、ドイツのスポーツクラブの歴史は19世紀から続くもので、今の日本の感覚でいえばNPOと考えると理解しやすい。
 そんなスポーツクラブには様々な理念や理想が付されてきた。もっとも歴史が長いだけに時代によってはナショナリズムを育む装置とされたり、軍事化をすすめることに使われたこともあった。

 ひるがえって19世紀といえば、身分・階級がよりはっきりあった時代だ。その中で教養市民と呼ばれるエリートも労働者も、そしてクラブ内の上層部も一般のメンバーも、どのような立場であってもメンバーはお互いに「おまえ」と呼び合うことになった。

 スポーツをともにおこなうメンバーの平等性という理想がそこにあったからだ。そしてそれは現代でも残っているわけだ。1848年設立のあるスポーツクラブの会長などは「われわれには<おまえ>と呼び合う文化がある」と誇らしげに述べる。

次ページ先生にも「おまえ」
関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT