Jフロント、コロナで敷く「トロイカ体制」の成否 5月に7年ぶりトップ交代、山本長期体制に幕

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構造的不況に陥っている百貨店業界においてJフロントは、自ら商品を仕入れて売る従来型百貨店のビジネスモデルではなく、テナントからの定期的な賃料で利益を得る不動産ビジネスに切り替えてきた。

安定収益源の確保により、新型コロナの影響が終盤に出た2020年2月期も、営業利益は402億円と前期比1.5%減にとどまった。この点、大幅減益計画の三越伊勢丹ホールディングス(3月期決算)とは対照的だ

不動産ビジネスでは、十分な収益を上げることができないテナントは賃貸料を負担できずに赤字となり、違約金を支払ってでも契約期間終了前に撤退するケースがある。ただ、Jフロントはこれまで進めてきた不動産事業を一層推進していく考えで、そのカギを握るのが不動産事業に長けたパルコになりそうだ。

グループの成長を左右するパルコ

山本氏は「グループ成長の次のカギはパルコ」と断言する。
Jフロントはパルコを2012年に連結子会社化。完全子会社化を目指し、2019年12月にTOB(株式公開買い付け)を実施、2020年2月に成立した。

パルコはもともと、故・堤清二氏が率いたセゾングループの傘下企業だった。時代を先取りしたファッション・ライフスタイルの提案を武器に、若者層の支持を得た。特に、1973年に開業した渋谷パルコは、劇場や音楽、アートの分野で新しいカルチャーの提案を全面に打ち出した。

Jフロント傘下になってからもパルコは存在感を放ち、2017年開業の上野フロンティアタワーでは、中年層をメインターゲットに据えた派生業態「パルコヤ」をオープン。大幅改装して2019年11月に開業した新生渋谷パルコは、任天堂の直営ショップやエンターテインメント性の高い専門店を充実させた。2020年秋に新装開業する大丸心斎橋北館にも、パルコが主要テナントとして入居する計画だ。

魅力的な商業施設に特徴があるパルコの強みをグループ経営に生かすべく、好本氏、澤田氏、牧山氏の3人はこの半年間、1~2週間に一度のペースで開催する「トップマネジメント会議」と称する会合で、今後のグループ経営の方向性について議論してきたという。

牧山氏は会見で「パルコはよりパルコらしくありたい。そういう思いでいっぱいだ。不動産開発についてはパルコが中心になって運営し、最高のコンテンツを提供していきたい」と語ったが、パルコを軸としたJフロントの行く道は決して平たんではなさそうだ。

梅咲 恵司 東洋経済 記者

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うめさき けいじ / Keiji Umesaki

ゼネコン・建設業界を担当。過去に小売り、不動産、精密業界などを担当。『週刊東洋経済』臨時増刊号「名古屋臨増2017年版」編集長。著書に『百貨店・デパート興亡史』(イースト・プレス)。

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