STAP論文の調査委員会が研究不正を認定 筆頭執筆者の小保方氏は理研に不服申立へ

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「悪意のない」間違い

調査委員会の見解に対し、小保方氏が「悪意のない間違い」であると主張していることも、分かりにくさを増している。研究論文の不正で、「悪意の有無」にこだわるのは科学者間では共通の認識のようだが、それが強調され過ぎると、「悪意がなければ何をやってもいい」といった誤解を招きかねない。

理研の竹市雅俊CDBセンター長(左)は、3月10日に論文撤回を勧めているが・・・

小保方氏のコメントでは、「論文中の不適切な記載と画像については、すでにすべて訂正を行い、平成26年3月9日、執筆者全員から、ネイチャーに対して訂正論文を提出しています。」と結ばれている。

訂正論文を出した翌日の10日には、理研の竹市雅俊CDBセンター長に呼ばれて論文撤回を勧められ、笹井、丹羽両共著者とともに同意したとされている。だが、論文はいまだに撤回されておらず、理研としても勧告以上の行動はとることはできない。共著者のバカンティ・ハーバード大教授の同意も得られていないままだ。

改ざんやねつ造などの不正は、科学者、科学論文としての信用問題だ。一方、STAP細胞が実在するかどうかについては解明されていない。これは科学的な真理の探究の問題であり、論文の瑕疵とは別の問題だ。STAPの再現試験は、丹羽仁史理研多能性幹細胞研究プロジェクトリーダーがおよそ1年かけて行うという。STAP細胞が再現できたとしても、小保方氏と理研にとって信頼回復の道のりは遠そうだ。

(撮影:風間仁一郎)

小長 洋子 東洋経済 記者

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こなが ようこ / Yoko Konaga

バイオベンチャー・製薬担当。再生医療、受動喫煙問題にも関心。「バイオベンチャー列伝」シリーズ(週刊東洋経済eビジネス新書No.112、139、171、212)執筆。

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