コロナ対応で「株を下げた人」「上げた人」の差 「小池百合子の発言」に安倍首相もタジタジ

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■安倍晋三

2、3カ月前まで、日本の安倍首相はおそらく世界の自由民主主義陣営で最も重要なリーダーだった。政治的パワーは最高潮に達し、東京五輪のアピールでも称賛を集めた。だが現在、危機に当たり断固たる態度を示し、明快で大胆な発言を続けているのは東京都の小池百合子知事だ。

小池に対しては、パンデミックよりも自分の評判を気にしているという批判も出そうだが、政治の世界では「正しいが弱い」より「正しくないが強い」ほうが望ましいケースもある。この時期に強さを見せた小池との比較で、安倍はつらい立場に追い込まれた。

■ 文在寅(ムン・ジェイン)

危機が訪れると、社会に不安とパニックが広がる。パニックになると、人々は1つ旗の下に結集し、自国のリーダーを支持する。その期待にリーダーがうまく応えられれば、支持は長期的なものとなる。韓国の文大統領はその典型例だ。韓国の新型肺炎への対応は最も印象的だった。当初は危険なほど感染率が高かったが、その後予想以上にうまく感染拡大を抑え込んだ。文は4月15日の総選挙に向け、力強く歩を進めている。政権支持率は50%を超え、与党は野党に15ポイントの差を付けた。

コロナ禍で望まれる指導者象とは

■ボリス・ジョンソン

リーダーの本質はピンチのときにあらわになる──ジョンソン英首相がまさにそうだ。新型肺炎がイギリスで広がり始めた当初、ジョンソンはトランプと同じように状況を軽くみて、経済の減速を避ける方策を優先しようとした。ジョンソンが新型ウイルスを真剣に受け止めなかったせいで、国民は他人と一定の距離を置く「社会的距離」戦略の重要性をなかなか理解できず、検査も後手を踏んだ。

実は、リーダーシップの真価が問われるこの局面で、最も高い評価を得たのは世界的な指導者たちではない。地元のリーダーだ。例えばニューヨーク州のアンドルー・クオモ知事は、バイデン前副大統領を抜いて民主党の大統領候補になり、次期大統領も狙えるのではないかと予測する識者が多い(本人は出馬を否定しているが)。

ますます複雑化する世界の中で、人々は身近な存在に魅力を感じるのかもしれない。

<本誌2020年4月14日号掲載>

サム・ポトリッキオ(Sam Potolicchio)
ジョージタウン大学教授(グローバル教育ディレクター)、ロシア国家経済・公共政策大統領アカデミー特別教授、プリンストン・レビュー誌が選ぶ「アメリカ最高の教授」の1人。
「ニューズウィーク日本版」ウェブ編集部

世界のニュースを独自の切り口で伝える週刊誌『ニューズウィーク日本版』は毎週火曜日発売、そのオフィシャルサイトである「ニューズウィーク日本版サイト」は毎日、国際ニュースとビジネス・カルチャー情報を発信している。CCCメディアハウスが運営。

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