老練スズキの危機感、GMからフォルクスワーゲンへ鞍替えの真意

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対するVWは大満足だろう。欧州の自動車業界では今、「ダウンサイジング」が全盛となっている。小排気量のエンジンにターボ(過給器)を付けて出力を引き上げる方式で、とりわけ積極的だ。長年2リットルが主流だったゴルフは1.4リットルへ、ポロは1.4リットルをさらに1.2リットルへ小型化された。9月の独フランクフルトモーターショーには、燃料1リットルで100キロメートル走行を目指す超低燃費車「L1」を発表している。

ダウンサイジング競争が激しくなる中で、「小さな車をなるべくコストを下げて造るのが持ち味」(鈴木会長)であるスズキという存在は、VWの目にかつてなくまぶしく映っていたはずだ。

VWはそのうえ、スズキのインド事業も間接的に手に入れることになる。VWはシュコダブランドで参入しているものの、シェア5割の王者スズキの足元にも及ばない。ヴィンターコルン会長は「VWはアジアで大きく前進する」と満面の笑みで語った。

2000年代には世界販売が400万台ないと生き残れないという「400万台クラブ」構想のもと、業界に合従連衡ブームが起きた。だが、ダイムラークライスラーの合併解消や、ピーク時1000万台に迫ったGMの破綻は「規模が大きくても、1車種40万~50万台の寄せ集めでは立ち行かない」(日系メーカー首脳)という教訓を残した。

自動車業界に精通する中西孝樹アライアンス・バーンスタイン株式調査部長は「今後はまず、VWがスズキから低価格車の供給を受けるのではないか。スズキのOEMビジネスが急速に拡大する可能性がある」としたうえで、「トヨタ1人勝ちに見えていた業界に、トヨタに対抗するスーパーパワーが生まれた。競争の構図が変わる」と指摘する。減産地獄を見た業界に、新たな企業統合モデルの芽は吹くのか。歴史が注目している。

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(撮影:尾形文繁)

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