「土日を趣味に捧げる人」が結婚するための視点 30歳でスノボにはまった人の本気婚活の結末

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恵さんはすぐに結婚相談所に入会した。多くの結婚相談所は会員情報を共有するデータベースに加入している。「都内在住」「30代」「年収400万円以上」という程度の検索条件では膨大な数の独身男性が表示される。自分はどんな基準でお見合い相手を探せばいいのだろうか。恵さんにはわからなかった。

男性のほうからのお見合い申し込みは少なくなかった。しかし、「八方美人のくせに警戒心が強い」と自認する恵さんは、数回のデート程度では結婚を前提とした交際に進むことはできなかった。

「初対面では誰にでもいい顔をしてしまうんです。でも、本当に打ち解けるには時間がかかります。第一印象でお互いをよく思っていても、好意を伝えられた瞬間に警戒してしまったり。急に冷たくなるね、と言われることもあります。私はすごく面倒くさい性格なんです」

できるだけ控えていたスノーボードにもたまには行きたい。デートよりもスノーボードの予定を優先し、「僕がいる必要がある?」と相手に言われてしまったこともあった。

それでもある男性とは結婚を思い描くほど親しくなった。彼は海沿いの自治体で学校教師をしている。子どもを作ることを強く望んでおり、その子が小学校に上がるまでは恵さんには専業主婦として子育てに専念してほしいという。女性によっては願ってもない好条件だが、恵さんの気持ちはむしろ沈んでしまった。雪山への距離が物理的にも心理的にも遠くなるからだ。

「子育ての合間にサーフィンでもすればいいのかな、と思いましたが、どうにも気乗りしませんでした」

体調を崩したとき、親身になってくれた1人が…

結婚相談所を退会した恵さんは、今度は仕事に打ち込もうと決意する。バリバリと働いている人が多い営業部への異動を果たした。しかし、2年足らずで体調を崩し、「適応障害」との診断を受けてしまう。

そのときに親身になって心配をしてくれたのがスノーボードの仲間たちだった。気分転換になるだろうと恵さんを花火大会に連れ出してくれた。2018年の夏のことだ。その1人が貴文さんだった。

「彼のことは5年ほど前から知っています。知り合い程度、ですけど。正直言って、苦手なタイプだと思っていました。ストイックな滑り方をするので性格も厳しい人なのだろうと思い込んでいたんです」

 貴文さんは7月になっても山奥の残雪を探して滑り続けているほどのスノーボードマニアだ。花火大会に向かう車中で「今年は久しぶりに滑りたいけれど体力が落ちている」と不安を口にした恵さんを室内ゲレンデに誘った。板などの道具も含めて、自分の車で現地まで運んでくれるという。

「滑りたくて仕方なかったので『行く!』と即答しました。私は八方美人なので、気に入らない人とでも半日ぐらいは平気です(笑)。でも、彼と一緒に滑ってみると親切でいい人だとわかりました。久しぶりのボードは楽しくて楽しくて……」

喜々として滑っている恵さんを見た貴文さんは、さらにスケートボードでの練習にも誘ってくれ、道具を買いそろえるのにも付き合ってくれた。

「ずいぶん親切にしてくれるな、とは思っていました。でも、彼の気持ちはわかりません。とにかくスノーボードが好きなので、それに関わる人には親切なのかもしれないとも思いました。私自身も彼を好きというほどの気持ちではなかったです」

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