《ディズニーの正体》東京ディズニーリゾート、リピーター獲得の秘訣

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 野村証券金融経済研究所の桜井雄太シニアアナリストは「ここ数年、TDRのリピーター戦略には質的な変化が見られる」と語る。「従来はハード志向が強かったが、最近はイベントやショーなどソフトを重視するようになった」。その戦略転換を裏で支えるのが、リピーターを意識したマーケティングだ。

TDRのマーケティングには二つの切り口がある。そのものズバリ来園頻度と、もう一つが同行形態。同行形態とは、家族で来園しているか、友達同士か、カップルかといったグルーピングのことだ。マーケティングの切り口としては年齢別アプローチもあるが、TDRではあえてそれを重視しない。「グループインタビューからは、40~50代のゲストもパーク内の行動は20代と変わらないとわかる。年齢が違うからとまったく別のセグメントと考えると、ワナにはまってしまう」(OLCの明石泰典・テーマパーク統括部長)。

来園頻度は年1回以下とそれ以上の二つのグループに分ける。さらに各グループを三~四つずつに細分化するが、基本的にはこの二つがベースとなる。

年に何度も来園する顧客は、非常に目が肥えていて、TDRに期待するものも当然高くなる。そうしたゲストに対して提供するのが、“クローズな環境”だ。

10年2月、TDRで限定の宿泊プランが実施される。参加者たちは、パレードへの参加、ディズニーの開発担当者がパークを案内するツアーなど七つのプランから希望のプランを選択できる。そのほかディズニーキャラクターによるスペシャルショーやディズニーグッズのオークションなども開催。料金は1泊2日で12万円からと高額だが、10月の申し込み開始から数日で、定員の300名は埋まった。

この宿泊プランは今回で2度目。2年前に実施した前回では、アトラクションの開発経緯をディズニーの担当者が直接説明した。こうした学ぶ機会の提供も「ディープなファン」の心を揺さ振る。この層に対しては、カスタマイズがキーワードだ。

一方、年1回以下しか来園していない層には、今後個人の記念日を重視する。「たとえば誕生日に割引チケットを出して、パーク内で家族そろってお祝いできるようなメニューも考えている」(明石部長)。しばらくTDRから遠ざかっている顧客に対し、来園のきっかけを作る戦略だ。

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