(第26回)いつの間にかのスリム法・その4

山崎光夫

 食生活が原因の後天的な糖尿病が激増している昨今である。40歳を過ぎた5人に1人が糖尿病予備軍とされ、いまや、糖尿病は国民病になった。
 糖尿病は微小血管に合併症が出るので、あらゆる病気の原因となる。病気のデパートといわれるのももっともである。
 糖尿病や生活習慣病をもたらすのは、飽食、美食、過栄養といわれる。いかに少食、粗食を果たすかが問題になる。貝原益軒おすすめの腹八分の実践が必要であろう。健康啓蒙書『養生訓』が世に出た時代は江戸・元禄時代のすぐ後の正徳年間。平和が続き、生産力はアップし、経済力も充実して、文化は爛熟した。武士の食事も1日2食から1日3食が普通になり定着した。まさに贅沢食謳歌の時代だった。そこにそうした飽食を戒めるための教えとして、『養生訓』が発刊された必然性も見出せる。

 前回、食事のとき、時間をかけてよく噛んで唾液を出すのを心がけると、食事の絶対量が減らせ、消化がよくなることを紹介した。
 また、以前、「ヤマザキ式5色事法」を書いた。食卓に意識して赤、青、黄、白、黒の5色の食材を取りそろえる方法である。これで大方、栄養のバランスがはかれる。
 さらに提案したのは、箸を置く習慣である。箸を持ったままだとつい早食いになる。箸をとにかく箸置きに置いて、もぐもぐ噛む回数を増やす。

 日本歯科医師会では、「8020(ハチマルニイマル)」運動を展開中である。成人の永久歯32本中、80歳で20本を維持する運動である。
 私の場合は…、
・1食事に20分かけ、
・1口に20回噛み、
・1日に合わせて20色ほど食べる。
 まずこれで体形のスリム化ははかれるだろう。また、80歳まで健康で生きる道も開けるにちがいない。これぞ、「ヤマザキ式2080」である。

 私の同級生に女子アナウンサーがいる。
 ある日、彼女を放送局に訪ねた。定年を数年後に控えている年頃だったが、相変わらずスリムで、学生時代の印象とあまり変化せず、ひどく元気である。
 その彼女が、
 「健康診断の結果が出て悪いところがひとつもなかったの。そこで決心したことがあるの」
と楽しそうである。
 私は何だろうと考えていた。
 「100歳まで生きようと思ったの。生きようと思うと細胞が準備するんですって。面白いでしょう」
と言う。何にしてもただ漫然と生きるのはよくないようだ。

 私は美貌でならした彼女が100歳になってしわくちゃ婆さんになったときの姿を想像した。と同時に、この目で見てみたいとも思った。すると、何のことはない。私も100歳まで生きなければならないではないか。
 これで私は100歳まで生きる目標を持った。私の細胞も今日から準備を始めるだろう。
 100歳まで生きる目標を持ち、その上、スリムになっていれば、これに優ることはない。一挙両得ではないか。
 持つべきは友だちだと思った日だった。
山崎光夫(やまざき・みつお)
昭和22年福井市生まれ。
早稲田大学卒業。放送作家、雑誌記者を経て、小説家となる。昭和60年『安楽処方箋』で小説現代新人賞を受賞。特に医学・薬学関係分野に造詣が深く、この領域をテーマに作品を発表している。
主な著書として、『ジェンナーの遺言』『日本アレルギー倶楽部』『精神外科医』『ヒポクラテスの暗号』『菌株(ペニシリン)はよみがえる』『メディカル人事室』『東京検死官 』『逆転検死官』『サムライの国』『風雲の人 小説・大隈重信青春譜』『北里柴三郎 雷と呼ばれた男 』など多数。
エッセイ・ノンフィクションに『元気の達人』『病院が信じられなくなったとき読む本』『赤本の世界 民間療法のバイブル 』『日本の名薬 』『老いてますます楽し 貝原益軒の極意 』ほかがある。平成10年『藪の中の家--芥川自死の謎を解く 』で第17回新田次郎文学賞を受賞。「福井ふるさと大使」も務めている。
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