クルマ無し!「レクサス」新ショールーム戦略 最新テクノロジーもアニメもラグジュアリーに

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トイレに隠された豊田社長のいたずら心

高田:「クルマを置かなくてもいい」と言っても、実は細部にクルマへの愛があふれています。レクサスの部品が階段脇の壁面にデザインされていたり、トイレには無数のミニカーが展示されていたり。ちなみにミニカーのひとつには豊田章男社長のサインが記されているんですよ(笑)。

トイレに飾られたミニカー。よく目を凝らすと、豊田章男社長のサイン入りミニカーも

:はい、僕も行きました。すごい空間になっていましたね。ミニカーとかカフェに並ぶ本とかクルマ好きの人が反応するツボが空間のあちこちにありますよね。

久保:最終的に片山さんから出てきたのが「クラブハウス」というコンセプトでした。レクサスユーザーの象徴的なイメージを持つ「ミスターレクサス」という仮想の人格をつくりました。その人の主催で、同じ趣向を共有する人が集まってくるような場をイメージしました。入口がカフェで、お客様を通す部屋がダイニング。そして、イベントなどを通じてお客様を「おもてなし」する場所というわけです。

:豊田社長はインターセクトにどのような感想をお持ちなのでしょうか?

高田:とても気に入っていてよく来ていますよ。社長こそ我々が仮想した「ミスターレクサス」だと思っていますしね(笑)。

:とすると、今まさに、社長の家に招かれているようなものですね(笑)。そんなクラブハウスのエントランスには「FUGLEN(フグレン)」とコラボしたカフェがありましたね。

久保:コーヒーが大事なコンテンツのひとつだということは、当初から強く意識していました。皆さんにインターセクトを家と職場の間にある「サードプレイス」だと思ってもらいたいからです。日常的に関わるきっかけとなるコーヒーは重要な要素です。「FUGLEN」はとても人気がありますし、何より美味しい。日常を少し豊かにする“ラグジュアリー”を提供できると思いました。目指すは、「街いちばんのコーヒー屋さん」です。

高田:コーヒーの講座を開催すると、たくさんの若者が興味を持ちます。一部の好事家だけでなく、普通の若者が参加してくれるのです。その姿を見ると若年層は消費に消極的だと言われているけれど、自分たちの興味のあることに関しては、ものすごく熱心だということがわかる。我々はそうした新しい感性をもっと“受信”していきたいと思っています。ここには重要な狙いが込められています。たとえば、情報発信という側面だけで考えると、青山より人通りが多い場所はたくさんあるし、もっと大きいハコならたくさんの人を動員できるわけです。でも、そうしないのはなぜか?それは発信と同時に、新しい感性を“受信”したいからです。

:普通、ショールームは発信の場と考えてしまいますが、高田さんの“受信”っていう発想は面白いですね。

高田:現代はラグジュアリーという概念が、とても広義で難しくなっていると思います。途上国におけるトラディショナルなラグジュアリーと、先進国におけるそれとはまったく違うし、ラグジュアリーブランドがコングロマリット化して、富裕層から大衆向けまで、さまざまな商品を売ったりもしている。ひとくちにラグジュアリーといっても、気取ったものもあれば、砕けたものもあるし、自然に優しいものだってある。そんなラグジュアリーの新しい概念が華咲く中で、レクサスの「ものづくり」に共感してくれる様々な世代やバックグラウンドの人の感性を受信し、一緒に未知の未来を創造する。インターセクトをそうした場所にしていきたいと思います。

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