現在進行中の大不況は今までの不況とは違う--ケネス・ロゴフ ハーバード大学教授

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 G20の各国政府は、現在、自分たちが生み出した怪物を制御するという困難な課題に取り組んでいる。債券の保有者への支払いは、納税者の税金で保証されている。そのため大手銀行は多くのリスク資産を抱えていても、資本市場で国債金利より若干高い程度の金利で長期資金を調達することができる。したがって、銀行への資金の貸し手は、銀行がどんな種類のギャンブルや投資をしているか、あるいは金融規制に効果があるのかどうか心配する必要はないのである。

金融規制をめぐる政府のジレンマ

よい話は、多くの政府が新しい金融規制を導入することが必要だと考えていることだ。しかし、ここでも問題がある。金融規制は恐ろしく複雑であり、規制に国際的な一貫性を確保しようと思えばさらに複雑になるだろう。各国が個別に新しい制度を作り上げようと急げば、災いをもたらすことになるだろう。

他方、政府が“うまく対処する”ために時間をかければ、金融システムに不確実性の巨大な影を落とすことになる。自己資本比率が引き上げられれば、銀行は貸し出しを抑制するだろう。ほかにも、自己資本比率をどこまで引き上げればいいか、大銀行を分割すべきかどうか、について盛んに議論が行われている。

こうした状況の下で、アメリカやヨーロッパなどの地域で信用の収縮が続いても不思議ではない。ゲームのルールがどうなるかわからないならば、銀行はバランスシートの拡大に用心深くならざるをえない。

政府は手詰まり状態に陥っている。慌てて規制すれば、後で後悔することになる。必要以上に厳しい規制を導入すれば、何十年にわたって世界経済の成長を阻害することになるだろう。

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