コロナ大打撃で露呈した百貨店ビジネスの岐路 訪日客依存の終焉、今後必要な改革は何か?

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3月上旬休日、銀座は歩行者天国になっていたが、これまでと比べると人は減っていた。3月末にはさらに人出は減少した(写真:UPI/アフロ)

百貨店業界はかつてない苦境に立たされています。新型コロナウイルスの感染拡大、昨年10月の消費税増税、今年は記録的な暖冬とマイナス要因が重なる中、百貨店も大きな影響を受けました。

特に都心の百貨店はこの数年間、訪日外国人観光客(インバウンド)の恩恵を多大に受けてきたことは周知の事実です。それが今回のコロナショックの影響で、前年実績を大幅に下回りました。

日本百貨店協会によると、今年2月の全国百貨店売上高概況は前年同月比12%減、免税売上動向に至っては総売上高が同65%減。

そして直近の3月には、大手百貨店4社(三越伊勢丹ホールディングス、J.フロントリテイリング、高島屋、エイチ・ツー・オーリテイリング)の月次売上高速報は約40%減。免税売上についても約90%減の大打撃となり、過去最悪の水準に落ち込みました。インバウンド激減に加え、営業時間短縮、外出自粛要請に伴う臨時休業の実施も影響しています。

本来はこの時期だからこそ、現場では売り上げ減少防止に何ができるか、経営陣は将来ビジョンの構築が必要です。百貨店業界はこのまま低迷していくのでしょうか? いままでの悪化原因を模索し、どのような方向性で改革・改善すれば復調またはそれ以上の良化に向かうのでしょうか? 本稿では百貨店業界の再生に向けて論じてみようと思います。

すでにインバウンドに頼りきりだった百貨店業界

前提として、コロナショックが起きる前から百貨店業界は苦境にたたされていました。それをインバウンド拡大という追い風が覆い隠していただけなのです。

百貨店の既存顧客(インバウンドを除く)は訪れる日を決めています。家族やカップル、奥様方は井戸端会議のメンバーでの買い物を楽しみたくてやってきます。そして、何を購入するかを決めずに、訪れているのです。お店で何か良い提案があれば購入し、なければ買わずに帰られるのです。

例えば、お店で良い提案のコートがあり、期待値以上の満足度の高い接客サービスを受け、自宅には似たような商品をたくさんお持ちなのに、見た目よりもリーズナブル(付加価値のある)と感じる商品を購入されて、満足感で自分を納得させて帰られる。そんな「買い物好き」な人たちに支えられた百貨店でしたが、客足は年々減少していました。

1.「今一度お客様を見る・知る」マーケティング(MK)の見直し

そもそも、百貨店の売上・利益の低迷は、自社・自店のお客様に適したMD=マーチャンダイジング=商品(モノ&コト)を供給できていない事に尽きます。MDに適したプロモーションもできず、それがずれているのです。

今一度、百貨店業界は自社・自店のお客様がどこに居て、どのような生活をしているのか、何を欲して、何が不要なのかを把握する事が必要不可欠。蓄積してきた過去の購買データは山ほどあるのに、活かしきれていません。

まずは、既存顧客の実態把握が優先されます。それを把握して、現在の売場・商品・提案のすべてを見直し、現在の売場・商品・提案の実体と顧客像の差を縮めていく事から入るべきなのです。既存顧客を精一杯取り込んでから、インバウンド顧客のような次の客層に目を向けるべきだったのです。

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