おせちの中に世相が見える、戦略が見える!《それゆけ!カナモリさん》

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 ただし、おせちには制約条件がある。それは販売チャネル(Place)である。生おせちは「地域限定」にして数量の確保と、保存性と、運送にかけるコストを減らさなければならない。「全国どこでもお届け」にしてしまっては安全性の問題や、味の劣化、運搬中に盛りつけが崩れるというようなリスクが生じる。提供する料亭や仕出しはいやがるだろうし、百貨店としても責任が持てない。そもそも食の好みが地域で全く異なる。

 考えてみれば、地域に応じた商品の提供は本来あるべき姿である。今までは多くの商品が「売る側の都合」で全国一律で行われていたのである。地域性のあるおせちは、見ていても楽しく、商品提供の本来あるべき姿を示しているともいえるだろう。

 各社がどのようなプロモーション(Promotion)を展開しているのかは、最後にWebサイトで見ていくとして、それを見る前に、どんなテーマ性が設定されているのか、その切り口をざっくり見ておこう。テーマ性とは即ちポジショニング(Positioning)であり、各社の戦略の要だ。

 「食の達人が仕立てたおせち」「いまどきおせち」「なつかしおせち」「三都雅おせち」「料理研究家のおせち」「ヘルシー精進おせち」「タイガースおせち」「おばあちゃんの味おせち」…ホンッッッッッッッッッッとに種類が多くうまくカテゴライズできないのである。大学院の学生に、「ちゃんとポジショニングマップを書いてみろ」と言っている身としては情けないが、とにかく乱立状態なのである。

 消費者ニーズの多様化に対応しているというよりは、まだまだ手探りで百貨店のプランナーたちがハァハァゼェゼエと息を切らしながら手探りをしているという状態が目に浮かぶ。デパ地下商品としてはえらく高単価であるし、成長市場なので手は抜けない。

 この熱い市場に百貨店はもちろん、コンビニエンスストア、スーパーなどが入り乱れて、バイヤー、マーケター-たちがチエの絞り合いをしているのだ。う~ん。これを見逃さない手はないだろう。週末ひまがあったら、各店舗をじっくりと回り、それぞれの展開を眺めるだけでも飽きない。おかねのかからない、大人の遊びゴコロだ(独自のポジショニングマップが書けたらぜひ送ってほしい)。

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