黒字でも休止、上野モノレールに復活はあるか 遊戯施設以上の存在だったわずか300mの鉄道

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上野モノレールでは、これまで4世代の車両が運転されてきた。開業時から使用されたのがH形。1両あたりの定員は31名と小さいが、車体にはいち早くアルミを用いるなど、日本初のモノレールにふさわしい先進性がうたわれた車両だった。

第2世代上野モノレールとなったのがM形で、車両1両あたりの定員は31名と初代のH形と変わりないが、車体外板には軽量のFRPを使用し、普通ガラスと熱線吸収ガラスの合わせガラスによる側窓、車両の上部が前に突き出た形となる逆後退角を用いた先頭部デザインなど、この車両も初代に負けない先進性が盛り込まれていた。

第3世代上野モノレール30形でも制御装置に電機子チョッパ制御を採用するなど、制御装置には先端技術を備えたものが採用されている。そして第4世代が現代まで運転が続けられてきた40形だ。

制御装置にVVVFインバータ制御を搭載しての登場で、こうして年を追って車両の変遷を振り返ってみると、どの車両もその時代の先端のシステムを搭載していることに気がつかされる。穿った見方にすぎるかもしれないけれど、1編成のみを作ることができ、仮に何かの不具合が生じたとしても、悪影響は少なく復旧できる上野モノレールという鉄道が、交通局にとっては格好の実験の場になっていたのかもしれない。

40形は、客席の腰掛けをFRP製とし、ピンク、グリーン、イエロー、ブルーによる彩色が施された。このあたりは、この車両が動物園の中を走る車両であることを踏まえた演出となっている。

真の理由が見えないモノレールの休止

しかし、そんな上野モノレールも、2019年11月1日に運行が休止されてしまった。これは設備と車両の老朽化によるものとされている。発表されているのは、廃止ではなく休止であり、今後の予定については未定で、有識者などの判断を踏まえたうえで、正式な廃止としてしまうのか、設備、車両を更新して、運行再開となるのかは、まだ不透明な状況だ。仮に運行を再開するにしても、相応の時間が必要とされることは、想像に難くない。

昔のマスコミが新型の通勤電車の登場よりもはるかに大きなスペースを割いて、動物園の中を走る300mのモノレールを紹介したのは、この乗り物が未来の鉄道、未来の都市の姿を想像させる豊かな可能性を秘めていたからだった。当時から、将来の都市交通は行き詰まりを見せることが予想されていて、渋滞や衝突事故を起こす路面を走る交通機関に変わって、空中を走るモノレールが、都市交通の主役となることが期待されていたのである。

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