オバマは”KYな安倍”を説得できるか? 4月の訪日がチャンス

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オバマ大統領の4月訪日がチャンス

――東アジア地域の政治力学は今後どう展開していきますか。

大変な試練が待ち構えている。日韓関係はすでに急速に悪化しているが、それがいつ終わるのかの視界はゼロだ。私にはこれが最も厄介な問題だ。日韓の間には協力の可能性がかなりある。両国には戦略的、外交的、経済的に共通した利害が多い。ところが、緊張激化のために多くのものが失われている。だからといって、日中関係の重要性を軽視しているわけではない。日中両国はアジア太平洋地域の巨人だ。しかし、その関係はつねに複雑であり、大揺れが組み込まれている。

中国政府も韓国政府も日本を領土問題や歴史問題に押し込めるのに慣れっこになっているわけではないし、日本も靖国参拝に対する中韓の懸念をまったく無視しているわけでもない。一方、米国政府は日本と近隣諸国との紛争に巻き込まれるのを懸念している。米国はその地域の紛争とは一定の距離をおこうとしているが、日本政府にとって、それは米国側の日本への関与不足と受け止められている。これらの問題は、引き続き日米同盟に波及することになろう。

――米国は微妙な境界線を歩いています。つまり、安倍首相を力づけるわけにはいかないし、かといって、日米間の距離を広げると中国に付け込まれるので、その距離にも限度があるということでしょうか。

安倍首相を無視するようなことをすると、日本で日米同盟に対する心配が拡大しかねない。今までのところ、閉じられたドアの後ろから安倍首相に対していろいろなメッセージが発信されている。米国政府としては、日本政府に対して米国の心配をもっと直接的に、はっきりと伝える必要があるかもしれない。

オバマ大統領は4月訪日をチャンスに、安倍首相とアジア太平洋地域の大きな戦略について議論すべきだ。同時に歴史論争にこれ以上踏み込むことは、これから長期にわたって進めていく日米同盟の双方の努力を阻害することを、安倍首相に対してはっきり言うべきだろう。米国が日本の歴史紛争に直接的に踏み込むことは、よほど注意を要する。しかし、戦略的な文脈からすれば、米国政府にとっては安倍首相に対して過去についての個人的な信念より、もっと全体像に照準を合わせるように仕向ける絶好のチャンスとなろう。

ピーター・エニス 東洋経済 特約記者(在ニューヨーク)

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Peter Ennis

1987年から東洋経済の特約記者として、おもに日米関係、安全保障に関する記事を執筆。現在、ニューズレター「Dispatch Japan」を発行している

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