人手不足の建設業界、火を噴く人材争奪戦 自治体を含め、技術者の採用が活発化している

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東京都は中途採用を毎年行っているが、土木系を中心に建設関係の技術者採用を増やしている(上段・右下表)。「特に若い世代が多いわけでなく、不足している年代の人員を補う形で採用しており、30代、40代だけでなく、50代も採用している」(東京都人事委員会・田中賢也試験課長)。たとえ59歳で採用されても、公務員なら希望すれば65歳まで再任用される。

さらに東京都では技術系の新卒採用試験の内容において14年度から一部で新方式を導入する。これまでの専門試験・論文を廃止、新たにプレゼンテーションシート作成を課し、2次試験でプレゼン・面接を行う。国家公務員と同じ試験内容では、二つとも合格すると「霞が関」のほうに取られてしまう。そこで「試験対策不要」と銘打った新採用試験を導入することになった。

積極的な大成建設

大手ゼネコンの中でも中途採用に積極的なのが、大成建設だ。新卒採用も増やしているが、戦力化するまでに4~5年はかかる。目先の仕事をより多く受注していくには、どうしても人材が必要だ。そこでキャリア採用を、13年度の95人に続き14年度は110人に拡大した(上図)。

大成建設は現在の国立競技場の元請け工事を担当したことで知られているが、20年の東京オリンピックのメイン会場となる新国立競技場の受注にも前向きだ。シンボリックな建物だけでなく、好環境の中で受注を拡大していくためにも人材確保に意欲的だ。

一方、鹿島など一部ゼネコンは、人員を増やすことに対して慎重姿勢を崩していない。中堅ゼネコンの多くも「東京オリンピック開催の1年前ぐらいには工事案件は減っていくだろう。東北の復興需要も一巡していくことを考えれば、人員を増やすことより、現在の仕事をより効率的に消化していくことが重要。人員面では協力会社やOB(定年後の再雇用)活用で乗り切っていく」(中堅ゼネコン幹部)。かつての経営危機や人員整理がトラウマのようになっており、今ある人員でやれるだけの受注しか取らないという姿勢だ。

人手不足への対応はさまざま。現在の好況をどう考え、将来をどう予測するかによって、数年後には大きな実力差がつくかもしれない。

週刊東洋経済2014年3月29日号<24日発売>核心リポート04を転載)

木村 秀哉 東洋経済 記者

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きむら ひでや / Hideya Kimura

『週刊東洋経済』副編集長、『山一証券破綻臨時増刊号』編集長、『月刊金融ビジネス』編集長、『業界地図』編集長、『生保・損保特集号』編集長。『週刊東洋経済』編集委員などを経て、現在、企業情報部編集委員

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