おもちゃの片付け役不在の民主政権

おもちゃの片付け役不在の民主政権

塩田潮

 「おもちゃ箱の後片付け」をする人がいない。初めて専用の広い部屋をもらった子どもたちがおもちゃ箱をひっくり返して遊びに熱中し始めたが、時間がきても誰も後片付けをしないから、収拾がつかない。現政権の一番の問題点はここだろう。
 マニフェストを「おもちゃ」にたとえるのはやや不適切だが、おもちゃ箱をひっくり返したように部屋中に広げ、夢中になっていじり始めた。ところが、首相、閣僚、党幹部たちは思い思いに動き回る。普天間基地移設、ガソリンなどの暫定税率廃止後の環境税導入問題などが典型例だ。

 普天間問題では、岡田外相と北沢防衛相は足並みが揃わない。社民党の福島党首は党内事情もあって「連立離脱カード」を振り回す。国民新党の亀井代表も党利党略絡みで社民党寄りに構える。調整役のはずの平野官房長官も右往左往、鳩山首相はその場しのぎの曖昧路線で結論先送りだ。日米関係、沖縄の住民感情、民主党の公約、連立政権の安定度という問題が絡み、出口が見つからない。
 連立の枠組みの問題に直結するため、最終処理は剛腕の小沢幹事長に頼るしかないという空気も強いが、本人は入閣を阻まれたこともあって、「政策不介入」「内閣一元化」の方針を盾に、「内閣で処理を」と突き放している。

 おもちゃ箱をひっくり返すこと自体は悪いことではない。密室での政策判断でなく、自由な意見表明、オープンな議論は民主党政治の良質部分である。とはいえ、甲論乙駁の閣僚、優柔不断の首相ではおもちゃ箱は片付かない。自民党政権時代は頼りがいのある片付け役がいた。霞が関の官僚機構だ。そもそもおもちゃ箱のおもちゃも、大半が霞が関製だったから、後片付けも手際がよかった。
 民主党政権は、さあどうするか。

 結局、首相本人がきちんと後片付けができる「強いリーダー」に生まれ変わるしかないが、自身の政治資金問題を見れば、鳩山首相はもともとおもちゃ箱をひっくり返したままにして生きてきたような政治家と映る。
 果たして「宇宙人」に変身は可能かどうか。
(写真:今井康一)
塩田潮(しおた・うしお)
ノンフィクション作家・評論家。
1946(昭和21)年、高知県生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科を卒業。
処女作『霞が関が震えた日』で第5回講談社ノンフィクション賞を受賞。著書は他に『大いなる影法師-代議士秘書の野望と挫折』『「昭和の教祖」安岡正篤の真実』『日本国憲法をつくった男-宰相幣原喜重郎』『「昭和の怪物」岸信介の真実』『金融崩壊-昭和経済恐慌からのメッセージ』『郵政最終戦争』『田中角栄失脚』『出処進退の研究-政治家の本質は退き際に表れる』『安倍晋三の力量』『昭和30年代-「奇跡」と呼ばれた時代の開拓者たち』『危機の政権』など多数
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