インド赴任、ビザ取得の大変な実態
日本企業のインド進出を阻む深刻な問題

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――うーん。なかなか耐えがたいですね。

そうした数多く聞いた「叫びの声」を類型化すると、(1)ルールがわかりにくい、(2)ルールが細かい、(3)ルールが頻繁に変わる、(4)ルールが変わった事がどこにも明示されない、(5)ルールの解釈、運用が場所、担当者によって異なる、(6)不備が複数あった場合に、一度に指摘してくれない、などになります。

中でも「ルールが頻繁に変わる」というのがインドのビザ問題の最大の特徴で、最大の難点です。大袈裟ではなく、毎月のようにルールが変わります。そして、「ルールが変わったのか、解釈が変わったのか」が判然としない場合さえもあります。これは国の法規制自体がコロコロ変わるというインドの特徴でもありますが、それにしてもビザルールと運用の問題はひどすぎます。結果的に「同じ状況の人が同じ申請をしても結果が違う」という摩訶不思議が常態化しています。

赴任の2カ月以上前にビザ申請しよう

――効率重視の日本人には厳しいです。

インド人は典型的にいい加減な人が多いですが、その分、寛容な人たちですので、不条理で非効率なことが起きても、日本人のようにいちいち怒りません。赴任者にとっては「ああ先が思いやられるなあ」と、期せずしてインド社会の不条理さを覚悟する場にもなっています。

ネクストマーケット・リサーチ代表      須貝信一

――対策としては、前もって準備すればいいということでしょうか。

赴任2カ月以上前に申請する必要があります。ただし、赴任ギリギリまで人事が固まらない場合もあります。特に、インド進出時の最初の赴任者の場合、ほかのことで頭がいっぱいで、どうにもならないケースもあります。

また、インドは赴任先として人気があるわけではありません。人事でも揉めることも多々あります。ですので、人事部としては、こうしたことも含めて、赴任者選考、辞令と赴任のスケジュールを考えなければなりません。家族帯同の場合は、本人のスケジュールを先にして、家族のスケジュールを後にずらしたほうがいいです。とにかく、赴任が決まったら、早く申請をすることではないでしょうか。

(撮影:井下健悟、田宮寛之)
 

田宮 寛之 経済ジャーナリスト、東洋経済新報社記者・編集委員

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たみや ひろゆき / Hiroyuki Tamiya

明治大学講師(学部間共通総合講座)、拓殖大学客員教授(商学部・政経学部)。東京都出身。明治大学経営学部卒業後、日経ラジオ社、米国ウィスコンシン州ワパン高校教員を経て1993年東洋経済新報社に入社。企業情報部や金融証券部、名古屋支社で記者として活動した後、『週刊東洋経済』編集部デスクに。2007年、株式雑誌『オール投資』編集長就任。2009年就職・採用・人事情報を配信する「東洋経済HRオンライン」を立ち上げ編集長となる。取材してきた業界は自動車、生保、損保、証券、食品、住宅、百貨店、スーパー、コンビニエンスストア、外食、化学など。2014年「就職四季報プラスワン」編集長を兼務。2016年から現職

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